Palabra

日々「言葉」をひろっています

陶酔

どんなεにもかならずδがあって
おさまるところにおさまるなんて
感受性に支配されているヘボな役者の自己陶酔の演技
みたいなもんでだいたい
あんたが見渡せるあんたって
胸からしたと両肩からさき。
肝も心も尾てい骨も背中だって頭だって
痛てえときぐらいしか
あることに気づいちゃいねえじゃねえか。

(利150623)

陶酔

開き直って

見えないふりでなく
見なければならない
必然性も
必要も
義理も
ないことをしるべし
やるべきことを
その方向に
もう迷わず
どうなっても
たかがしれていると
開き直って

(不150106)

開き直り

秋刀魚

テーブルの皿にまた

二本

平行に

ならんでいる。

遺伝子の運びやの

えさ。


(利150525

秋刀魚


占拠

なにが私を占拠してきたのか
なにをしても
なにをしなくても
な の に
もう懲り懲り
ガラじゃなし
見据えず
ぼさぼさで
安全弁を取り去り
捨てて
かかろう

(不150111)


占拠

やろう

それでも
まあ
いきましょう
おもいつめず
いいですよ
べつにと
いっている
ほんとにそれでいいですよ
それで
こだわること
ないのかそれで
いや
べつに
まえをみてたら
べつにだったのだから
そうだった
やろう

(不150124)

働く

白い空

降りそうで降らない
白い空
直球 ホーク スライダー
なにをなげあげたところで
すうっと
迷わず
ゆけ
吸い寄せてゆく
だけ
水不足の焦れったさの
そぶりもみせない

(不150116)

白い空

落蝉(5句)

ひるがほや家人は認知療養中

打ち水の交はる向かひ両隣

落蝉が非常階段転がれり

虫をらぬ虫籠とほる風の声

秋郊や幼き足の遠き道

(り)

落蝉

ひとつぐらい

まずはゆくあたりを決めて
静かにあおぎながら
はじめよう
人生論を説くつもりはないが
すべては蓄積だからと
信じてみよう
そっちを向いたら
簡単には逸れないで
最後までいってみよう
ひとつぐらい
ひとりぐらい
いつまでも
どこまでも
こだわって
あきらめず

(不150104)

人生

蝉時雨

透明な顔を
空に向ければ
朝靄のなか
あっという間に
季節はずれの
蝉時雨

せみ

時制

とらえきれない標的
とらまえられぬ人
とりつく島
とりつくろう言葉
ただ忘れるだけの現在形
ずっとやって来ている未来形
まだやったことない過去形

未来

破局

しずけさのなか
かすかな風をたよりに
ぼくはいる
このあたりは
けっこうな景色で
見通しもまずまず
執着心をばねにあれこれと
つづいてもいる
満つる と
そんなころあいが
破局の登場にはぴったりで
ぶつかって
ぼくの内臓は破裂して
とうぜんに視界は失せる
瞬時に跡形もなく

(不150107)

破局

塔が立つ
まっすぐに塔が立つ
これという目的があるわけでも
これという理由があるわけでもなく
塔が立つ
鉄骨製でも
雪像でも
現実でも幻想でも
どうでもいいがまっすぐに
塔が立つ

炎天に煙草の煙が上ってゆく
夏の夜空にただ一本突っ立って
屍が積み重ねられて
塔が立つ

(不150108)

塔

発明

ATCGGAT
TAGCCTA
ぼくのからだのすべての遺伝子の文字が
スパコンからながれ出てくるときって
籠毛与 美籠母乳 布久思毛与
コモヨ ミコモチ フクシモヨ
音をつらねて歌われた春の求婚譚が
輸入漢字との日本的イオン結合を遂げて
以来のできごとなんだよ きっと

(利150607)

雄略

ダー ダー ダ ダ スコ ダ ダー
  夜はどこかへ更けて
  賢治の原体剣舞連の
ダ ダ スコ ダ ダ
  線路をたたく電車のリズムも
  更けると激しく
  くっきりと
ダ ダ ダー スコ
  夜の女は叫んでいる
スコ スコ スコ ダ
  悲痛も憤りも
  快楽も
  ただの音で
スコ スコ ダー スコ
  闇に決して溶け込まない
  音の泡沫が漂っている

(不150118)

原体

ハレ

最後はすかっと
空と海
水平線を
しばらく見ていなかった

霞がはれるには
じたばたしたり
じっとしたり
ともかくも
時間を頼りに
待つだけだった

(不150115)

ハレ

地震

水を汲みに
充電器を買いに
行列がつづいている
埋まった車
土砂崩れ
倒壊 安否不明
停電2万5000世帯
未知の活断層が
動いた

新聞

だんだん畑(改・6句)

腫れ物の癒ゆを待ちをる残暑かな

秋暑し睫毛瞬く音を聴く

村の名の消ゆる郷里や月のぼる

姨捨にだんだん畑月の道

かぶりつく西瓜に母の皺の笑み

西瓜割る役目担ひし父在らず

姨捨棚田4

西瓜(9句)

齧り付く西瓜に母の皺の笑み

地響きを上げて西瓜を割りにけり

断層は地球のひびや西瓜割り

一服の煙籠もれる残暑かな

腫れ物の癒ゆを待ちをり残暑かな

つけまつ毛重く瞬く残暑かな

古里の芋煮つころがして月見かな

村の名の消えし郷里や月のぼる

姨捨に段段畑月の道

スイカ

辞書

もすこしは
ぼくの辞書に
ことばが入っていると思っていた
のに
掬えない
みいだして
貯め込むだけに
執心しようとしている
ことばは世界
世界はことばの
一対一写像ならば
ひとことは
世界の濃度を確実に増しているはずなのに

(不150119)

辞書

交差点

交差点をいつも
斜めに渡ってきた
そして行って帰って
また渡っている
前へ進んでいくって
後ずさりすること
気を配らなくたって
戻ってまた渡る

交差点の向かいの
ラーメン屋は
いつの間にか
店じまい
しているんだけれど

交差点

昇華

窓を覆い尽くしていた氷の羊歯が
失っていく
失われていく
形を
姿を
溶け
果つ
枯れるよりも早く
空気に昇華してゆく

鳥の群れが
空から落ちてくる
オスプレイのように
空からはがれて
脱皮してケリ
つけるには
狂うか歌舞くか
やっけっぱちるか
顕彰のない最後の旅がはじまる

(じ150520)

昇華

鉄仮面

ゆっくり少しずつ原点へ近づいて
ナマの自分を見つけてゆく
唐辛子の頭を突っ込んで
生暖かいトン汁に浮かびながら
ひそめて生きている
眉も 唾も 心臓も
声も 脳味噌も 鉄仮面も

(じ141217)

鉄

覚悟

ひとひとりずつひとつの人生
ひとひとりずつひとつの仕事
ひとひとりずつひとりの伴侶
ひとひとりずつひとつの快楽
ひとひとりずつひとつの生命
ひとひとりずつひとつの世界
ひとひとりずつひとつの憤怒
ひとひとりずつひとつの覚悟
ひとひとりずつひとつの最期
ひとひとりずつひとつの明日

(じ150502)

覚悟

しずく

絞り出した
あとには
もう残っていない
と ふり返れば
実はまだ ある
まだ絞れる
存在とは
無限の連鎖
掬い尽くし焼き尽くし
使い尽くしやり尽くし
それでも残り
それだから支え
まとわりつく
一滴に満たぬ
しずく
こころを使い尽くしたあとの涸れを
癒しにお節介に
滲み出してきやがる

(不20150120)

し

枝豆

枝豆をはじき
口のなかに飛び込ませる
口蓋を二度三度と
テンポよく打つ
歯触りは
あしたに響き
疲れの意味を分析させる
つまみでなく主役
ビールには大根が
こんやはあう
電話のベルがまた
列車の音を聞きながら
受話器を握る

(不150117)

枝豆

崩壊

岩山に内包された
トンネルの中を走っている
そういえば
一瞬の岩盤の崩壊
そして埋める瓦礫
余別発七時五分小樽行き
路線バスに乗用車一台
二十人の圧死
無念の発破 発破

岩盤

ハードル

スターティングブロックを蹴ってから
もうどれくらい経ったのだろう
踵ひっかけ太ももぶつけ
アキレス腱を痛めながら
ハードルを越えてゆく
足を引きずり
とりあえずまた一台
越えてゆく
いくつ越えてもまた
前にはハードル
越えてしまえば消えてゆく
そしてまた一台
もとめていれば
また越える

ハードル

甘い生活

去年今年
虚子のいう貫く棒など
見えはしないし
倒せもしない。
だから
というわけではないが
フェリーニのおんなたちよ
ぼくはきょうから
万歩計の一歩を踏み出すことにする。

(利150612)

甘い生活

脱臼

おそらく 
そっからはじまるんだ
なにもかもかなぐりすてるなんて
できはしないけれど
なにかほどけたみたいな
あきらめのような
ひらきなおれたような
そんなあたりから
はじめよう 
脱臼
しちゃって
ちからはぬけて
もうほしがらず 
まよっても
まどわされずに 
たんたんと
だれにもいちどおとずれて 
もどってこれない
そのときまで

(じ150505)

脱臼

サンゴ

海に潜って
サンゴ礁に刻まれた
沈黙の文字を解読している
クラムポンは無作為に
泡を吐きながら
自慰に耽っている
さらに潜れば
百年海藻に絡め取られ
浮上できない潜水艦

さらに潜って
マントルからの噴流が発する
声にならない吐息を
翻訳してみる
口語の優しさと
文語の厳しさを
織り交ぜながら

サンゴ

ドローン

ようやく種まきのときがきた
枯葉の言葉の種を
まいてゆく
力拳こぶしを作れない
肘の曲がりで
まいてゆく
老けたからだが勝手に
まいてくれる
飛べないドローンの風が
まきちらしていく
芽を吹くあてなどないさ
顔色で分けたって
しようがない
しっかり居ようとしてれば
穫れるもの
そのうちに

ドローン

摩天楼

西新宿の摩天楼の
つけ根あたり 
谷底からふつふつと
湧き上がってくる
焦げ茶色の怒り
もたげては押し殺し
炎を吐かずに
燻っている
炎を漏らさず
燻らせている

残された歳月を測っている

西新宿

吸盤

脚なのか腕なのか
攻めているのか守りなのか
もうそんなのに
こだわってられる
わけじゃなし
どうにもこうにも
もてあましたまんま
こんがらがったまんま
それでも蛸の吸盤は
くっついて居る
終わってもまだ

吸盤

ランドリー

冷房からしばしとき放たれて
外界へと触覚を向けた
下町の四辻には自転車の黒マスク
葬儀屋の隣では無人の
コインランドリーが回っている
気紛れな和菓子屋は
店を閉めている
路上に貼りついた領収書
空きボトルを集めて生きる
その日暮らしの粋な老人が
街角の小さな三角公園で
読書に勤しんでいる
江戸の味 手焼きの味の
花見せんべいののぼり旗が
風に吹かれている

コインランドリー

高騰

けさはからっと晴れ渡り
空気は冷えて澄んでいるのに
あいも変わらず野菜は高騰中だ
胡瓜もとまとも人参も
きゃべつも韮も大根も
今夏は西瓜も玉蜀黍も
ろくすっぽ食えなかった

季節は巡り巡るから
それでも 続けているよ
途切れず時は流れてゆくんで
続けていくんだ
これを最後と決めたから
腹を固めて粘り切り

野菜

秋刀魚

しゃきしゃきと
刀身を輝かせながら
水揚げされた初もの
秋刀魚が二本
変わらぬ食卓に
並んでいる
読まれぬブログを
更新するだけの日常
小さいけれど
住みなれては来たアパート
天然の要塞

サンマ

青嵐

五日連続で発生した台風が
遥か南方の海洋から
不気味な風を送っている
捕まえ切れぬ青嵐の距離
夏葉が暑い地面で
蹴っつまづいている
旅の荷を降ろして
ちょっと整理整頓をするなら
このあたりしかない

拘留中の富田林警察署から遁ずらした
強制性交男が原付きバイクを奪って
ひったくりを繰り返している

青嵐

かたつむり

一頭の老いたかたつむりが
角出し 槍出し 
はるかむかしに
天守を失くした孤城の
石垣を登ってゆく

もはや敵は居はしない
宿る嵩ばり露に 隠れた
からだ よぢり へばり
粘りつき たれに
語られることなく登ってゆく

当てなくただ振り
しぼるだけしぼり出し
登ってゆく よぢり
へばり来た
かすかな痕跡

カタツムリ

雷雨(5句)

夕暮れに駆け込む太き雷雨かな

ハンカチの皺のばしつつ残業す

日蝕の日の向日葵やあかあかと

ひまわりや予報はあすも晴れ上がり

腫れものの癒ゆるを待てり残暑かな

雷雲

ゲリラ豪雨

雷鳴を聞いていた
雨のあいだに
落雷を感じていた
遠さ 近さ
いにしえからあした
いまどきからの距離を
探っていた
ちょうどいい
天の雑踏を尻目に
最後の仕事に取りかかろう
ほっとけ ほっとけや
気に掛かるものはすべて
そっちのけさ
こっちにゃもう然したる
時間は残っちゃいない
ゆけるとこまでゆく
だけなんだから

豪雨

靴底

未来も過去も
郷愁も悔恨も
地に接しては離れ
もうすぐ穴の開きそうな
使い古しの革靴の
底にある

認知症の母が一分ごとに
繰り返す同じ
問いにある

靴底

一瞬のうちに霧がまた
山肌をおおってゆく
樹海の乱れの近傍
県境の尾根筋
消息断ったヘリコプターの
折れた尻尾
緑 赤 白
機体の残骸

いつかの光景がまた
脳裡を染めてゆく
生と死の境

はるな

水平

水平線に向って
小舟が1艘
ともかくも
浮かんでいる
いつ沈んでも
誰も気づきはしない
でも浮いている
まだ生きている
釣り糸をまだ
垂れている
ここまで来ている
ここからもゆく

sea-2242716_640

上腕二頭筋

飛び込んで
わずかにしぶく
水面
からだ
浮きあがり
隆起
突き立てて
上腕二頭筋

力こぶ

ワイパー

強い台風13号が
雨雲をふりまきながら
自転車の速さで本土に接近している
逃げるように高速バスのワイパーが
ばら撒かれる雨の雫を
掃き落としてゆく
前をゆく車のバックライトが
霞んでゆく
愚鈍そうな雲が
闇夜に吹き出してきた

top-wiper

御柱

首筋から
脳天にかけて
走っていく
ずしん
疲労が頭痛に転化しているのか
たまっているからなのか
因果律は機敏に反応する
朝4時
寒気がして目覚め
風邪薬を飲んで
便所で用を足し
乱雑な部屋をかき分け進み
さきっぽが欠けた歯が
しみているのに気がとどく
安産の神 小さな社の御柱
境内の四つの穴っこに
引っ張ってきた桧の大木を突っ込んだ
あの勢い あの角度で
つっこめばすかっとする
井の中の蛙でいるぼくにも
ずしんの種を捕捉できるのだ

(不150122)

御柱

風呂敷

風呂敷に座右の本二冊と
メモのノートを包んでいる
これだけ、なんだと思う
人生のサイズに風呂敷を
広げてみても然したる
肩書きも 前歴も
見つかりはしない。
風呂敷の端っこを斜めに
結び合わせて、よいしょ
旅に出る。変わりばえはしない
認知症の母のいる郷里へ向かう
いつもの高速バスの旅

風呂敷

盆踊り

誰ひとり登っていない
櫓のまわりを
巡りはじめた
まだ輪にならない
盆踊り
都会の捨てられた運動場で
巡りはじめた
輪にはならない
盆踊り
歌もお囃子も
太鼓も笛の音も
聞こえてきはしない
けれどすんなり巡りはじめた
盆踊り
輪にならなくったって
戻って来れなくたっていい
わたしの歩む
盆踊り

盆踊り

熱帯夜

もそっと
もわっと
覆ってくる
襲ってくる
熱は体内に
蓄えきれず
籠りきった
まま。
今日もまた
熱帯夜。

猛暑

孤独

自家製の孤独は
数ミクロンのモーターが
ぶるんぶるん
60兆細胞のなかを回って
うまれるんだ
ほら
脳細胞突起をつなぐ
シナプスまでまたきた。

(利20150529)

細胞