Palabra

日々「言葉」をひろっています

しずく

絞り出した
あとには
もう残っていない
と ふり返れば
実はまだ ある
まだ絞れる
存在とは
無限の連鎖
掬い尽くし焼き尽くし
使い尽くしやり尽くし
それでも残り
それだから支え
まとわりつく
一滴に満たぬ
しずく
こころを使い尽くしたあとの涸れを
癒しにお節介に
滲み出してきやがる

(不20150120)

し

枝豆

枝豆をはじき
口のなかに飛び込ませる
口蓋を二度三度と
テンポよく打つ
歯触りは
あしたに響き
疲れの意味を分析させる
つまみでなく主役
ビールには大根が
こんやはあう
電話のベルがまた
列車の音を聞きながら
受話器を握る

(不150117)

枝豆

崩壊

岩山に内包された
トンネルの中を走っている
そういえば
一瞬の岩盤の崩壊
そして埋める瓦礫
余別発七時五分小樽行き
路線バスに乗用車一台
二十人の圧死
無念の発破 発破

岩盤

ハードル

スターティングブロックを蹴ってから
もうどれくらい経ったのだろう
踵ひっかけ太ももぶつけ
アキレス腱を痛めながら
ハードルを越えてゆく
足を引きずり
とりあえずまた一台
越えてゆく
いくつ越えてもまた
前にはハードル
越えてしまえば消えてゆく
そしてまた一台
もとめていれば
また越える

ハードル

甘い生活

去年今年
虚子のいう貫く棒など
見えはしないし
倒せもしない。
だから
というわけではないが
フェリーニのおんなたちよ
ぼくはきょうから
万歩計の一歩を踏み出すことにする。

(利150612)

甘い生活

脱臼

おそらく 
そっからはじまるんだ
なにもかもかなぐりすてるなんて
できはしないけれど
なにかほどけたみたいな
あきらめのような
ひらきなおれたような
そんなあたりから
はじめよう 
脱臼
しちゃって
ちからはぬけて
もうほしがらず 
まよっても
まどわされずに 
たんたんと
だれにもいちどおとずれて 
もどってこれない
そのときまで

(じ150505)

脱臼

サンゴ

海に潜って
サンゴ礁に刻まれた
沈黙の文字を解読している
クラムポンは無作為に
泡を吐きながら
自慰に耽っている
さらに潜れば
百年海藻に絡め取られ
浮上できない潜水艦

さらに潜って
マントルからの噴流が発する
声にならない吐息を
翻訳してみる
口語の優しさと
文語の厳しさを
織り交ぜながら

サンゴ

ドローン

ようやく種まきのときがきた
枯葉の言葉の種を
まいてゆく
力拳こぶしを作れない
肘の曲がりで
まいてゆく
老けたからだが勝手に
まいてくれる
飛べないドローンの風が
まきちらしていく
芽を吹くあてなどないさ
顔色で分けたって
しようがない
しっかり居ようとしてれば
穫れるもの
そのうちに

ドローン

摩天楼

西新宿の摩天楼の
つけ根あたり 
谷底からふつふつと
湧き上がってくる
焦げ茶色の怒り
もたげては押し殺し
炎を吐かずに
燻っている
炎を漏らさず
燻らせている

残された歳月を測っている

西新宿

吸盤

脚なのか腕なのか
攻めているのか守りなのか
もうそんなのに
こだわってられる
わけじゃなし
どうにもこうにも
もてあましたまんま
こんがらがったまんま
それでも蛸の吸盤は
くっついて居る
終わってもまだ

吸盤

ランドリー

冷房からしばしとき放たれて
外界へと触覚を向けた
下町の四辻には自転車の黒マスク
葬儀屋の隣では無人の
コインランドリーが回っている
気紛れな和菓子屋は
店を閉めている
路上に貼りついた領収書
空きボトルを集めて生きる
その日暮らしの粋な老人が
街角の小さな三角公園で
読書に勤しんでいる
江戸の味 手焼きの味の
花見せんべいののぼり旗が
風に吹かれている

コインランドリー

高騰

けさはからっと晴れ渡り
空気は冷えて澄んでいるのに
あいも変わらず野菜は高騰中だ
胡瓜もとまとも人参も
きゃべつも韮も大根も
今夏は西瓜も玉蜀黍も
ろくすっぽ食えなかった

季節は巡り巡るから
それでも 続けているよ
途切れず時は流れてゆくんで
続けていくんだ
これを最後と決めたから
腹を固めて粘り切り

野菜

秋刀魚

しゃきしゃきと
刀身を輝かせながら
水揚げされた初もの
秋刀魚が二本
変わらぬ食卓に
並んでいる
読まれぬブログを
更新するだけの日常
小さいけれど
住みなれては来たアパート
天然の要塞

サンマ

青嵐

五日連続で発生した台風が
遥か南方の海洋から
不気味な風を送っている
捕まえ切れぬ青嵐の距離
夏葉が暑い地面で
蹴っつまづいている
旅の荷を降ろして
ちょっと整理整頓をするなら
このあたりしかない

拘留中の富田林警察署から遁ずらした
強制性交男が原付きバイクを奪って
ひったくりを繰り返している

青嵐

かたつむり

一頭の老いたかたつむりが
角出し 槍出し 
はるかむかしに
天守を失くした孤城の
石垣を登ってゆく

もはや敵は居はしない
宿る嵩ばり露に 隠れた
からだ よぢり へばり
粘りつき たれに
語られることなく登ってゆく

当てなくただ振り
しぼるだけしぼり出し
登ってゆく よぢり
へばり来た
かすかな痕跡

カタツムリ

雷雨(5句)

夕暮れに駆け込む太き雷雨かな

ハンカチの皺のばしつつ残業す

日蝕の日の向日葵やあかあかと

ひまわりや予報はあすも晴れ上がり

腫れものの癒ゆるを待てり残暑かな

雷雲

ゲリラ豪雨

雷鳴を聞いていた
雨のあいだに
落雷を感じていた
遠さ 近さ
いにしえからあした
いまどきからの距離を
探っていた
ちょうどいい
天の雑踏を尻目に
最後の仕事に取りかかろう
ほっとけ ほっとけや
気に掛かるものはすべて
そっちのけさ
こっちにゃもう然したる
時間は残っちゃいない
ゆけるとこまでゆく
だけなんだから

豪雨

靴底

未来も過去も
郷愁も悔恨も
地に接しては離れ
もうすぐ穴の開きそうな
使い古しの革靴の
底にある

認知症の母が一分ごとに
繰り返す同じ
問いにある

靴底

一瞬のうちに霧がまた
山肌をおおってゆく
樹海の乱れの近傍
県境の尾根筋
消息断ったヘリコプターの
折れた尻尾
緑 赤 白
機体の残骸

いつかの光景がまた
脳裡を染めてゆく
生と死の境

はるな

水平

水平線に向って
小舟が1艘
ともかくも
浮かんでいる
いつ沈んでも
誰も気づきはしない
でも浮いている
まだ生きている
釣り糸をまだ
垂れている
ここまで来ている
ここからもゆく

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上腕二頭筋

飛び込んで
わずかにしぶく
水面
からだ
浮きあがり
隆起
突き立てて
上腕二頭筋

力こぶ

ワイパー

強い台風13号が
雨雲をふりまきながら
自転車の速さで本土に接近している
逃げるように高速バスのワイパーが
ばら撒かれる雨の雫を
掃き落としてゆく
前をゆく車のバックライトが
霞んでゆく
愚鈍そうな雲が
闇夜に吹き出してきた

top-wiper

御柱

首筋から
脳天にかけて
走っていく
ずしん
疲労が頭痛に転化しているのか
たまっているからなのか
因果律は機敏に反応する
朝4時
寒気がして目覚め
風邪薬を飲んで
便所で用を足し
乱雑な部屋をかき分け進み
さきっぽが欠けた歯が
しみているのに気がとどく
安産の神 小さな社の御柱
境内の四つの穴っこに
引っ張ってきた桧の大木を突っ込んだ
あの勢い あの角度で
つっこめばすかっとする
井の中の蛙でいるぼくにも
ずしんの種を捕捉できるのだ

(不150122)

御柱

風呂敷

風呂敷に座右の本二冊と
メモのノートを包んでいる
これだけ、なんだと思う
人生のサイズに風呂敷を
広げてみても然したる
肩書きも 前歴も
見つかりはしない。
風呂敷の端っこを斜めに
結び合わせて、よいしょ
旅に出る。変わりばえはしない
認知症の母のいる郷里へ向かう
いつもの高速バスの旅

風呂敷

盆踊り

誰ひとり登っていない
櫓のまわりを
巡りはじめた
まだ輪にならない
盆踊り
都会の捨てられた運動場で
巡りはじめた
輪にはならない
盆踊り
歌もお囃子も
太鼓も笛の音も
聞こえてきはしない
けれどすんなり巡りはじめた
盆踊り
輪にならなくったって
戻って来れなくたっていい
わたしの歩む
盆踊り

盆踊り

熱帯夜

もそっと
もわっと
覆ってくる
襲ってくる
熱は体内に
蓄えきれず
籠りきった
まま。
今日もまた
熱帯夜。

猛暑

孤独

自家製の孤独は
数ミクロンのモーターが
ぶるんぶるん
60兆細胞のなかを回って
うまれるんだ
ほら
脳細胞突起をつなぐ
シナプスまでまたきた。

(利20150529)

細胞

飛び杼

渋谷駅前の雑沓のなか
タイガーマスクの覆面をした
新聞配達男が突じょ
走りはじめた。
Mハンバーガーをほお張る
茶髪少女を振り切り。
そもそもをたどるなら1733年
毛織物生産の省力化のために
ケイが発明した
飛び杼がきっかけ。
そのうちに各地でパソコンの打ち壊し騒動に
飛び火していくんだ
きっと。

(利150621)

ケイ
*1733年にイギリスの技術者ジョン・ケイにより発明された「飛び杼」

向日葵(6句)

日蝕の日の向日葵やあかあかと

向日葵や予報はあすも晴れ上がり

涼しさや弥勒菩薩の指のさき

涼しさや見舞ひし母に見送らる

ハンカチの折り目正しく涙拭く

ハンカチの皺伸ばしつつ残業す

向日葵

青き林檎の川中島に

霧ははれても
どっかりと
濃鼠色の雲が
降りている
稲穂垂れ
青き林檎の川中島に
人馬なし。
時の流れは風となり
満ちぬ叫びは
草木をゆらす
野に放たれてゆき場なき
犬ころ一匹ぎこちなく
目鼻微かな石地蔵に
小便をひっかけた

(じ150823)

川中島
*川中島古戦場史跡公園

とけてゆく
首筋にたまっている
疲れ
こころの濁り
憂鬱
いきかたへの
疑義
あすは
不凍港の
縁に寄せて
死への扉を
牛耳る輩に
牙を向けたい夜
はとけ
牙は隠れ
しゃんとして
たちどまれず

(不150126)

牙

花火

ホテル・レインボーの
掠れたネオンを吸い込んで
どっくろ どっくろ
夜の弁膜は
拡張型心筋症におかされたような
重いリズムで闇を
送りだしている。

ビルとビルのすき間から
どかん どかん 
遠く隅田川の花火が
顔を出しては消えてゆく

(じ150601)

2012年隅田川花火大会

台風

風が来た
雨が来た
籠もっている
籠もってくる
怒り
悔恨
台風12号が
通り過ぎてゆく

天気

案山子

だだっぴろいダダの渦巻きのなかに
足を取られながら
五・七・五・七・七の案山子に
とりあえずの服を着せてゆく。
ヤ行の二つの空白を拵えた
ことばの遺伝子を
憎みながら。

(利150605)

かかし

ベクトル

存在が
揺れ始め
北へ
旅に出た
連絡船に乗って
始めて
風に
触れた
十年たち
また(やっと)揺れた
かすかな触れは
連鎖していた
はずが
風はない
旅にあるのか
定住しているのか
おそらくどちらでもなく
確かなのは
錆び付いた触覚を研ぐのに
十年分の助走路を
ぼくは必要としているということ
多くを望めないから
風には触れぬ
鈍重な平穏に
ベクトルの起点を定める
絞り込まれて
起動せよ

(不150103)

ベクトル

風死して

風の死す町にいる
ふり絞って
いる
汗を絞り
疲れを絞り
こころのズレをねじ曲げて
軌道をととのえ
そろそろと
からだを伸ばし
準備態勢にある
気持ちの増幅を
なだめ込み
ゆるんだ弦を張り替えようとしている

(不改150123)

汗

カンパチ

かけ出して三年
卒業をして
給料をもらうようになって
なんでも
仕事だからと割り切るようになって
めしを炊かなくなって
名刺の束ができるようになって
ただの友がやってくることがなくなって
出張とやらであちこち出回るけれど
夜の鈍行で旅をしなくなって
遅くはなったが
夜がいつでも浅くなって
銀河鉄道に乗りたいなんて
いつからか思わなくなって
通りがかりの魚屋のカンパチの姿が
なんとなく愛しくなり出して

(不150127)

カンパチ

過去

どこかの変曲点で
それなりのまがり方をしてきた。
記憶を手繰り寄せて
ちょうどあの曲率のあたりを
探ってみる。
辿っていたはずの道端にはもうわたしの足跡はなく
迷ったあげくに渡った交差点では
信号が無造作に点滅を続けている。
ただ そこに
覗き忘れたふりをして通り過ぎてきた小さな穴がいくつか。
ほじ開けて顔を出してたら
どんな景色が見えたのだろうか。

(恐150130)

信号

カオス

どっぷりと
沈んでいたカオスの海から
記憶が姿を現したかと思うと
また沈んでいった

信じることのできぬじぶん
信じぬこともできぬじぶん
ぶらさげて とっかえ
ひっかえ くりかえし
いってはまた ひきかえし

絶望が 望みが
とっかえ ひっかえ
浮かんで しずみ
ひょっこら ひょっこら
沈没寸前の脳内宇宙
垂れ下げ ひょっこら

老いた母と田舎道
新しくできたというスーパーの
広告もって出かけてゆく

(じ150419)

Hēsíodos
*「カオス」の初出『神統記』を書いたギリシアの詩人ヘシオドス

不惑(8首)

人生最後の宿りとなるか引っ越し覚悟きめ本を捨て服を捨てて

風呂もトイレも最新式マンション住居というよりホテルのにおい

足かせあってこその人生と割り切りサラリーマンのローンライフ

新しく備え付けた本棚並べる本の順迷いつつ僕のちっぽけな世界

七年住んだアパート出てまた鳥籠のなかでも浮き浮きと始まる

悲しみも喜びも未練もあってそれが人生気付くって取り戻せぬこと

友ががん同僚もがんそんな年齢になったんだねという妻と刻みつづける

そこで学びそこで食を得て子を育てる底無しに不惑は過ぎて

(未150405)

孔子
*孔子

イミテーション・ゲーム

狂った犬が電信柱で
立ち小便をしている
ひっかかるわな
なわひっかける
正気の犬がベンチに
ねっころがっている

ナチスドイツの暗号を解いた天才数学者は
ホモセクシャルの罪で告発されて化学去勢
ホルモン注射を重ねる狂気にいのち絶った

正気の犬がベンチで
立ち小便をしている
ひっかけるなわ
わなひっかかる
狂った犬が電信柱に
もたれねむっている

(じ150508)

チューリング
*英国の天才数学者アラン・テューリング(1912-1954)

影を慕いて

さして急いているわけでも
急ぐわけがあるわけでも
ないというのに蹴っつまずいて
つんのめって ころがる寸前
なんとか踏ん張って 遥かさき
行っちまったあいつらの
足跡をふんづけている
もう聞こえるはずもない
足音に耳をかたむけてみる
あ〜あ
死んだ親父がよく歌ってたっけ
古賀政男作詞作曲《影を慕いて》

(じ150418)

古賀政男

ご開帳

紙コップが
からっ ころ
参道を
転がってゆく
牛にひかれて
一身二生
二生目の門前町
腐れ縁
断って
認知症の門
くぐった母みたいに
記憶を処分してゆく
安美錦みたいに
かわし土俵際
うっちゃって
人ごみ
こじあけて
さあ二生目の
ご開帳だ

(じ150417)

ご開帳

鶴嘴

まだ歩きはじめたばかりなのだ
はいはいから危なっかしげに
なんとか立って
ことばへの一歩
ことばでの一歩
どこへもまだ
行けてはいない
たどりつける
わけもない
ことばでやっと
歩きだしたばかり
時代おくれ
なんだけれどもむかしながらの
鶴嘴だよりの露天掘り
石炭掘りみたいにことばを
さがしはじめたのだ
落盤事故で埋もれても
生きていたなら掘りつづけよう
ことばを探し ことばを掘って
自分の歩幅でことばを歩く
ことばで歩く

(じ150429)

つるはし

歳月

ゆき先の目途さえたたない
旅の途上にある
幾歳月

進んでいるのか
退いているだけなのか
それとも
何処へも行っていないのか
定かならぬ
旅の途上にある
幾歳月

掘り起こされたナウマンゾウのような
2メートル以上もあるなだらかに屈曲した牙に
しがみつきぶら下がっているだけの
旅の途上にある
幾歳月

のっしのっし
とうに絶滅してしまった
化石でしかないゾウに乗っかって
なのになんでか飽きもせず
のっしのっし
老いるほかなんも
代わり映えせず
旅の途上にある
幾歳月

たぶん尽きるまで
のっしのし

(じ150420)

ナウマンゾウ

ボルネオ(5句)

ボルネオに生きて千切るや青バナナ

天狗猿バナナはお気に召さざるか

桶抱へ喋くる海女や梅雨明けぬ

梅雨明けや煙あふるる登り窯

夏休みお仕舞の日の日も暮れて

(り)

ボルネオ島
*ボルネオ

ヘリ

アスファルトのうえ
ときおり靴の下敷きになりながら
欠片になった花びらが
こびりついている
桜の木の部品だった花が
散って地に落ち転がって
横断歩道の白線に
重なり 張り付いて
春の風 寝入る赤ん坊
抱っこした躑躅色の女が
ななめに渡ってゆく
旧街道の交差点
ヘリコプターが一機
風を巻きおろして遠ざかる

(じ150427)

ヘリ

片陰

陰が風におされるカーテンのように
脚を伸ばして
街をおおいはじめた
それは雲が陽をかくす
陰なのだろうか
それとも第一幕から第二幕へと
季節うつろう舞台を仕切る
お決まりの装置なのか
明に暗 山の手には下町と
街にひと くっきり分かち隔てる
線引きなのだろうか。
陰のカーテンを鳥の群れが追いかけていく
せっついていた時間がだらりとすこし
もとへ戻ろうと 夜をひきよせようと
陰がべろっと舌をさしだしてゆく

(じ150501)

影

青林檎

実をつけ始めた青林檎の枝に
群がるすずめの
ちゅッちゅッちゅッちゅんが
跡切れた
やってくる
そして
消えさる
いつか
透明に
なりたい
透明に
ありたい

(じ150704)

夏緑

コンニャク筏

ぼろぼろの鉄鍋に満たされた
天ぷら油の表層を
コンニャク筏が漕ぎ出した
求めるでなし急くでなし
ひっくりかえったところで
コンニャク筏に表裏なし

ただそこに浮いてある
それだけのことなんだ
いつもの横町の隠居がひとり
鍋の野次馬ながめるばかり
それだけのことなんだ
いまさらきゃぴきゃぴ

コロモをまとうガラじゃなし
エビの天ぷら頭付き
揚げたてを待つひともなし
生兵法は怪我のもと
何も知らずに筏を漕いで
もすこし浮かんで居たいだけ

(じ150514)

こんにゃく