Palabra

日々「言葉」をひろっています

アイスキャンディ

雲の陰が尾をひきながら
街をおおってゆく
頬張るアイスキャンディが
子どもたちの口元から垂れている
私はいつからここに
座っているのか
お陰様の陰の傘
雲は空にひっかかったまんま
居てくれている
私はまだ追っかけている
日傘にまとわる陰のありかを
まだ探しつづけている
ちぎれる雲のことばの断片を

どこにもたどり着いてはいない
よいっしょ
そろそろ腰をあげないと

(じ150504)

220px-Icepop-green

磁気嵐

そこまでいかないと
見えないものを見る
そこまでいかないと
語れない言葉を語る
生きるって おそらく
そういうこと

星が液体となって流れる夜
固体が液化することなく
気体となって登ってゆく朝
そこにある言葉
そこにある狂気

星屑をひろいに
鉄紺の海へと向かう
何もかも微塵に
砕き散る
罵声を聴きに

まるで磁気嵐がふるように
骨 粉々に舞ってくる
すべてのトポスを
ひっくり返して
ただ身を震わせて
たたきつづける生

(じ150506)

250px-Magnetosphere_rendition
*磁気嵐

落ちる

角顔の刑事に
落とされそうになる。
黒ぶちの眼鏡の奥から
ぼくを覗き込む。
とっくに警部の年配だが(やっぱり)
まだ巡査長で
よれよれで
ねちっこく
迫ってくる。
「やっちゃ いない」
エルニーニョ熱波の夜
イギリスで作ってもらった
19世紀のギターで
フランシスコ・タレガの
ラグリマ(涙)をゆうっくりと
弾いているとうとうとっと
混濁
からすうっと落ちかけ
た とたんの熱力学で
摂氏30度のポルカへと
変調した。
夢にうなされ剥き出された
ぼくの罪の遺伝子が
巡査長のえん罪づくりに
荷担しだした。
刑事のせりふの近傍で
時間を微分し
転向の曲率に仕立てられた
ブラキオサウルスの20メートル近い首を
自分の捨て場を探りながら
滑走してゆく。

(利150625)

Brachiosaurus
*ブラキオサウルス

根が生えてゆく
まぜ合いまざり 引いて
引き 足し足しあわせ
引いて足す
納豆の糸みたいに
伸びて絡み
土に立たせる
樹冠広げて
屋根瓦 二階 三階
背を伸ばし
幹は太る 
年輪刻む
動かぬように
動けぬように
一本の木
根っこじゃ
動きは取れず
寝ころびたくても
立つしかなくて
いたたまれなくとも
一本の木

(じ150519)

木

レントゲン

めくってゆく一枚二枚
めくられてゆく一枚二枚
そら見えた レントゲンの写真だ
だれだってあるものがあって
ないものはない
うごいているものはうごいて
とまってしまえば それまで

それだけのことなんだ
皮をひんむいたらね

脳圧が最大限まできて
こりゃヤバッてとこまできたら
破裂したらそれまでって
開き直るしかない
年かさねるごとに覚えてきた
ぎらっ 開き直れば空の下
隣の中学校の校庭からいつものように
子どもたちのつんざくような
騒ぎ声が押し寄せてくる

(じ150515)

x線

「バナナ」6句

卓袱台に洋灯(ラムプ)をともすバナナかな

天狗猿バナナはお気に召さざるか

フラスコも作文帳も夏休み

夏休みおしまひの日の日も暮れて

桶抱へ喋くる海女や梅雨明けぬ

梅雨明けや煙あふるる登り窯

(よ180704)

バナナ

あした

海のうえまで雲の手を伸ばしていこう
海の向こうまで雲の脚を突っぱっておこう

そして

気まぐれのようにときおり射しかける
陽光のきらめきをたよりに

あしたも生きてみることにしよう

(じ150518)

太陽

綿毛

飛べぬ蒲公英
綿毛を飛ばし
飛ばぬ草木を
眺めてる
雨の滴を
ご所望か
それとも
陽が射すまでに
お化粧を
済ませなければ
ならないか
わらべ歌
聞いてうたって
踊りたいのか
気の利いた
言葉を待って
植わっているのか

(じ150522)

タンポポ

かりかりっ と
ころがり 硬直した蝉の胸が
折れてゆく。
踏んだ靴底からアキレス腱をつたい
腹から胸へとよぎり
届いた。
遺伝子の設計どおりに
張られた薄い鼓膜を
胸筋でふるわせ
さっきまでつくっていた。

(利150531)

セミ

午後

サオダケーの
一声が通る。
にわかに煙が
湧き
旗がひらめく。
上陸したばかりの台風の
単眼の下に蝉時雨が降っている。
「自動詩作装置」が一台
博物館に置き去りにされている。

(利150604)

竿竹

ソリトン

波を打つ山並
波を越えて山波
押し寄せる波
ぶち当たる山
ソリトンがやってきた
波を越えて
山となって
ぶちかましに
きた

(じ150702)

ソリトン

ハカ

ドーバー海峡を越えてたどりついた
B&Bを発って
ピカデリーサーカスからビクトリアへの迷路に
足を踏み入れてからずっと
行き倒れの在りかを探している。
25区1種18側32号
いつしかサーバーの遺伝子マップにインプットされる
ぼくの番地の。

(利150528)

bb
*B&B(bed and breakfast)

おどり

年に一度の祭りが降ってきた
女岩に男岩 
おどる阿呆がわいてくる
おしゃべりよりも文字よりも
おどっておどり
いのちの種をまくおどり
縄文のむかしもひとびとは
おどってはねて
はねられて
けっつまづいておどり立つ
とんでとばしてもえあがり
うたいひめいかよがり声
いのちの種をまいてはおどる

(じ150517)

踊り

上野5句⑥ 寛永寺

不忍や美大生画く蓮の花

不忍のベンチは二人白日傘

水打ちて谷中霊園寛永寺

青嵐鬼門を封ず寛永寺

芋坂の跨線橋越ゆ日の盛り

寛永寺
*寛永寺

上野5句⑤ 不忍

美術館煉瓦角張る薄暑光

学生の陶磁器に打つ卯月波

新緑や硝子の器反射光

芸術の道遙かなり新樹光

不忍の池辺をたどる雲の峰

不忍
*不忍池

上野5句④ 子規球場

初夏やスマトラトラの縞太し

動物に国境は無し夏の空

夏雲やお化け灯籠芝居小屋

子規記念球場走る夏帽子

チェンバロの奏楽堂に夏始

子規記念球場
*正岡子規記念球場

上野5句③ ゴリラ

公園の噴水屋根に弧を描く

噴水を離れて親子精養軒

新緑や桜林堂の小鯛焼き

飛行船何処へ行くか夏の雲

氷菓子食ふ子を眺む親ゴリラ

ゴリラ

上野5句② 西郷像

アメ横で被り比べて夏帽子

緑蔭や西郷隆盛犬はツン

西郷の顔は緑青夏木立

江戸城の丑寅の夏上野山

生き急ぐ彰義隊士の暑き夏

(古150513)

西郷像

上野5句① 上野山

夏きざす上野の山の人の山

夏立ちぬ舌状台地上野山

上野駅響き懐かし夏来る

帰省子やお国訛りの混じりつつ

アメ横に赤き彩り蛸の足

(古150513)

上野
*1930年代の上野(wiki)

ネジ

ネジを巻く
ちょっぴり緩んだ
ネジを巻く
初夏の日差しだけの道端で
ネジを巻いている
マゾヒズムの好悪だけの荘厳なる儀式を終えて
ネジを巻く
やせ我慢の幸福が洗濯竿にぶらさがっている下町で
ネジを巻いている
奴隷なる未来 草枕のユートピアで
自意識のネジを巻いていくのだ
排泄を待つばかりの美しき退屈
百里の半ばに九十九里がおかれている
道半ばにてネジを巻いてゆく
大いなる死者たちが茶飲み話をしている
玉は砕け散っても崩れぬ屋根瓦の軒先で
私はネジを巻いている

(じ150509)

ネジ

黒幕

メスがメスを抱え込み
ワギナとワギナを摺り合わせる
ほかほかっ
を繰り返し
ボスの妃デラと緊密になったヒカは
デラの死のあと一躍のしあがり
長男イオをボスに据え
次女の長男ニオをその後継者に定め
一七年間の安定政権を築いた

(利150609)

ヤク猿

本棚

そこには
ぼくの混沌がある。
一冊捨てる
二冊古本屋へ持ってゆく。
ずらす
三冊分の隙間ができる
四冊買って
差し込む。
ぼくも少し
ずれた
気がする。

(利150527)

ほん

音楽

深さ0.1ミクロン
幅0.4ミクロン
長さ5ミクロン
手のひらサイズの銀盤に
渦状星雲のように刻まれた60億個の凹みに
1ミクロンに絞った
薄青いレーザ光の針を
のせる。
干渉回折のシグナル。
ゼロ・ワン・ゼロ・ターン・タ

(利150603)

cd02

クラゲ

透明に泳ぐことなんて
かあちゃんの腹のなか
えら呼吸をしていたときにもう
わすれちゃってたんだ

何十億年も前に海水のなかに
出現したアメーバだって
へなへなのクラゲだって
透明になんてなれやしない

アメーバのまんま人間になって
子どものまんま大人になって
覚えたことば忘れていって
それでも羊水また泳ぎたくって

生きてゆくこと消えさること
覚えたことは忘れるために
生まれたときからしょっぱい人生
透明に老いてゆくことなんて

(じ150510)

クラゲ

運びや

絨毛突起の束を
くねらせ
水晶の棘を
もたげながら
盗んでいった。
遺伝子組換データ漏洩容疑の
ミヤマモンキチョウが
舞いおどる。

(利150606)

miyamamonki
*ミヤマモンキチョウ

智恵子(5句)

開かざる勝鬨橋や町薄暑

一陣の風に招かれ青田道

ざざめきて十万億土雨蛙

飛行士は夏至の地球に帰還せり

あどけなき智恵子を誘ふ火取虫

(り9月)

ちえこ
*高村光太郎の『智恵子抄』で知られる高村智恵子(1886-1938)

温暖化

アルフレット・ウェゲナーが
大陸が移動しているのに気づいたのは
世界地図を眺めていたときのこと
破いた新聞紙の切れあとのギザギザをつなぐように
大陸の凹凸を縫い合わせたら一枚になる
と思った。
超音速でプラズマが流れる
太陽風に晒されている地球の
一瞬でぼくも
冷房の針が刺すミシンで
縫い込み
辻褄を合わせている。

(利150618)

Wegener
*アルフレット・ウェゲナー(1880-1930)

一九九九年

葬列を離れて
盲目の手風琴弾きは
ザイールへむかって
旅だった。
ぼくは飛び降りたことのないベランダで
気休めの言葉に当惑しながら
干し蒲団を
叩いている。
ブラックホールに
雪が舞い込みはじめた。

(利150620)

アコーディオン

殺しや

クリプトスポリジウム
直径五ミクロンの原虫。
小腸の粘膜の上皮細胞の微細な膜にすみ
腸の栄養素を吸い取って
分裂を重ねる。
エイズ患者に取り付くと
コレラみたいな下痢を起こす。
死ぬまで出っぱなし
止まらない便に混じって
死ぬ前に脱出する。

(利150602)

crytonhk2
*クリプトスポリジウム

ヤる

朝かおを洗っていたら
尖った爪を立てて
うしろから羽交い締め
かとおもったら
がぶっ
太腿を噛まれた。
居間に上がり込んだ
かとおもったら
蜜柑を頬張り
ジロッと目を据えて
覗きこんだ。
サルが襲ってきた。

(利150611)

サル

ついでにぶらり探しに出かける
無くしたわけではない
気づかないできたもの
つかまえきれて居らぬもの
巣立つ年でなく
巣作る所以もなし
求めず それでも
まだ得られず
あるもの

(じ150701)

巣

もういっちょ

雲の刷毛で
空の掃除をはじめた
いく重にも跨いでいた連山は
ビルのぎざぎざで途切れ
あれやこれやの空のがらくたを
入道雲のバキュームカーが
ふうふううなりながら吸い集めている
すかっと捨てて拭き取って
てなわけいかない宙ぶらりん
それでも
あ〜あ
もういっちょ

(じ150713)

バキューム

進化

コンゴのボッソウ村の
メタ道具(道具を作る道具)を作る
ボノボたちはいつか
コンドームを作るための道具を作って
人口爆発に歯止めをかけるのか。
ボルネオの熱帯林の林冠を渡る 渡る
テングザルの鼻が
もし一センチ短かったなら
ぼくはいなかったのだろうか。

(利150610)

ボノボ
*ボノボ

のぞみ

マサカリで
マサカリカボチャを割って
食いたくなった。
うまくはない
けれど腹もちよくて
頑固な あの
歯ごたえ。
シジュウカラガンの濁声を聞きたくなった
ギンギツネに殺られて群れをなくすまえの。
最期を看取りたくなった
根頭癌腫瘍にかかった千年大樹の。

(利150617)

カボチャ
*マサカリカボチャ

犀の川に枕を放り込む
足跡を投げつける
舟の代わりに
雲を浮かばせてみる
川べりの田んぼの
若苗をのら くら
鴨がまたいで
通り過ぎてゆく

(じ150630)

250px-合鴨農法
*合鴨農法

勝鬨橋(6句)

辻に入るちんちん電車夕薄暑

町薄暑勝鬨橋は開かず橋

飛行士が夏至の地球に帰還せり

夏至の日や峠の先も九十九折

酔ひ染まり俯き顔にサングラス

サングラス外し顕るわらべ顔

勝鬨橋
*勝鬨橋

錆びついたナイフで
胸を突き
噴流
を浴びる。
マントル下部でうまれ
地殻を動かしているという。
1206年モンゴル高原
オノン川上流でのクルタイ(族長会議)で
チンギス・ハーンとなったテムジンが
飲み干したという。

(利150619)

チンギス
*テムジン

重力

するめを齧りあきて
午後のオートミール
屋上には赤いタワークレーン
まだ引っ掛かっている
引っ掛かってはいる

(じ150624)

タワー

仕事

ランダムに寄せてくる
波打際
五万光年
われわれの銀河のはずれあたりに
情熱は凍りついている。
時間は
大腸菌が生んでいる
寝言。

(利150526)

大腸菌
*大腸菌

風呂吹(5句)

干柿や懐深き母屋の軒

くさめして母の沈黙破れたり

大根を洗ふ老母の古束子

風呂吹や言ひすぎ悔いて居りにけり

着ぶくれど小さき母の猫背かな

(りP㊦)

風呂吹き

栗飯(5句)

惚け立つ母の裸体や洗ひ髪

母一人入れ歯を探す夜寒かな

栗飯を炊くは亡父と二人分

銅鑼焼を銜へし母や秋夕焼

しやりと梨齧る入れ歯の音高し

(りP㊥)

クリ

たんぽぽ(5句)

春疾風母は頭のリハビリ中

徘徊か散歩途上か猫さかる

迷ひ入るたんぽぽ畑夢うつつ

手のひらの蛙と語る老母かな

序破急のこころ跳ね散る庭花火

(りP㊤)

たんぽぽ

辞書

母音の鼓動をたよりに
代名詞の爪を突き立てて
点過去線過去現在完了現在進行未来過去
辞書に齧りつきよじ登ってゆく。
なにをこの野郎御託ならべてべらぼうめえ
何いってやがる株っかじりちんけいとうめ
と 因縁をつけあいながら。

(利150608)

辞書

折返し

終着駅のわからぬまんま
折返し点を曲がる
いちどきた道
いちど見た景色
いちど逢った人
行きはよいけど逆さ道
もどればきっと
閉じられる

(じ150709)

折り返し

アべべ

裸足のアべべが
ジャワ原人の子孫たちを
牛蒡抜きにして
無言でゴールに飛び込んだのは
アウストラロピテクスが
木をおり
ことばを覚えてから
どれくらい経ってからだったろう

(利150613)

アベベ
*アベベ

道くさ

入道雲に首輪をはめて
散歩に出かけた。
どう どう ドッ ドオッ
いまさらあわててみたって
もわっと浮き立つだけ
たまには踏みしめて
みたらっ。
林檎顔の小学生たちが
道くさ道くさ
畦道を帰ってゆく。

(じ150703)

入道

石笛

エジプトを
メソポタミアを長江を
跨ぎ
石笛は
八千年の全休符をはさんで
空気を振らせはじめた。
縄文文明人の波長で
透きとおって。

(利150616)

岩笛

かお

グリセリン酢酸カリに
漬かって
桃色に照る禿頭
やや肥大したほお
ひびきそうな鼻
おいてけぼりになったまま
さらしている。
「埋めてしまえの声強し」
と世紀末の新聞にはある。
ウラジミル=イリイチ=レーニンよ。

(利150622)

レーニン

石榴口

石榴口をくぐった奥には
風呂の暗闇
声かけあって
裸と裸

 常にたくを風呂といいて
 あけの戸なきを石榴風呂とは
 かがみいるとの心なり
 鏡を磨くに石榴の酢を用ゆ(嬉遊笑覧)

石榴口をくぐった後は
醒めるときまで
生の暗闇
一期一会の人と人

(じ150511)

石榴口
*石榴口

麦わら帽子

瑞穂の国に
稲穂たれ
携帯電話に
首部たれ
コンビニ袋
ぶら下げて
畦を行き交う
麦わら帽子

(じ150705)

麦藁帽子