Palabra

日々「言葉」をひろっています

ドラム缶

やっているどこかで
ぷつんと切れる
それだけのこと
嬉しくても悲しくても
やることあっても無くても
問答無用でいつか
ぷつんと切れる
それだけのこと
たれのように生きられる
わけでなく
たれのように生きたい
わけでもなくて
いつまでともなく
いつしかはじまったことを
繰り返すしかなく
悔いても諦めきれなくても
ぷつんときれるまで
いくしかなくて
救いきれる
言葉あるわけもなし

それにしてもきょうの雲
ドラム缶みたいに無骨に嵩張って
夕空の一角に納まっている

(じ150822)

ドラム缶

ペンキ

元気がいいはずの未来烏たちよ
いまからそんなに染まっちゃって
なんていうのは もう止して
晴れ晴れ好きでつづけてる
懲りないというか
執念というか
いえば恰好いいんだけれど
ただ染まりきった烏に
同じ色のペンキを塗りたくって
余計なお世話!いつまでやってんだと
煙たがられて

(じ150920)

ペンキ

途上

まだ旅の途上にいる
なにも見ていない
風も嵐も
さして
吹いてはいない

犬ころを連れて
サンダル履きで家を出て
まださしたる呻き声も
歓声も聞くことなく
言葉を見出すこともできず
旅の途上にいる

土砂崩れ警報が出た
ところもあるそうだけど
さしたる風雨も受けず鍾乳洞を
さ迷っている

遺伝子のゲノム解読が
すべて済んでしまったというのに
まだ鯨のお腹の中にいて夢心地
途上にある

(じ150917)

C1A9401
*「http://www.luissanmiguel.com/parada-en-el-camino/」から

工場の灯

闇の中をとぼとぼ歩くのは
けっこう気楽なものだ
つま先の少し先はもう
見えないのだから
たしかに不安は不安
なのだけれどエイヤッと
周りを気にせず
いっぽいっぽと
踏み出していける
ひとを気にせず
自分だけを拠り所に
ちょっとだけど
前へすすめる
さしたる望みは抱かぬが
遠くに何ということもなく
足がかりの灯はともっている
働かない工場のしるしだけの灯

(じ151031)

アークライト

川中島

食らう凄みで
川にらむ
食らわれたしかめ面で
川に待つ
軍馬なき戦場に
風が立っている
山が構えている
稲穂なき枯野
揺すり揺すられ
薄の吐息
粛粛と淡淡と
濃緑の川面を
過ぎてゆく霧
おせば引き
ひけば押し

(じ151001)

川中島
*川中島

狼煙

煙が上がっている
どこから
現れたのか
そのとき
何がおこった
というのか
なにか知らせる
狼煙
百年つづく山焼きの
残り火だろうか
海のただなか
いまだに消えぬ船火災の
残渣
いいやそろそろと
山の裏から出だした
最期のお告げ

(じ150803)

狼煙

諦め

たとえあなたがあなたを
しんじられなくなったって
あなたをしんじつづけている
ひとたちがいるってしってますか
それはあなたのおかあさんおとうさん
あなたのともだちやせんせいたち
いいえわたしだってそうなんです

そんなにかんたんにあきらめちゃって
いいんですか

(じ151208)

renuncia
*https://www.zonajobs.com.ar/noticias/grandes-consejos/motivos-para-renunciar-al-empleo/

アルペジオ

大波が寄せてきて
なにも打たずに
なにも聞かずに
ごっそりと
なにもかもを
さらっていった
むなしい潮騒
チェンバロが
同じオタマジャクシを
打ち続けている
ギターが
アルペジオを繰り返している

(じ150919)

アルペジオ

牛蒡

むかってくる
キョウキとなってむかってくる
むかってゆく
キョウキになってむかってゆく
ひこうきもくるまも
なまみのからだも
ヒトはいつから
そんなん
になってしまったのか
ヒトは土根になるための
いっぽんの牛蒡
でしかなかったんでは
なかったのか

(じ151016)

牛蒡

書簡

手紙を書いて割り切って
手紙を書いて生きていた
手紙を書いて明日になり
手紙を書いて何とか歩く
手紙を書いてハラを決め
手紙を書いてしめくくる
手紙を書いてさようなら
手紙を書いて逝っちゃった

(じ151203)

手紙

SP

摩耗した
かろうじての振幅の溝に
針を落とす
まだ回っていたのだ
12インチ
毎分78回転の
SPレコード
ばち ばち
引っ掛け 引っ掛かり
幻のマタイ受難曲を
またいでゆく
飛んで 跳ねて
擦り切れるまで
擦り切れるため
生と
回りつづける

(じ150816)

sp

辻褄

おそらくそれが
bestだよと
歩いてきたはずの
アスファルトの断片が
ばらばらになって
あっちにくっつき今度は
こっちと結ぼれて
辻褄あわせに
あくせくと
いかにもと

そういえばどっかから
欠かせぬ道連れが
居てたんだよな

(じ151116)

裾

孤高

孤高の桜が
散らす
花びらを浴びる
タッチの差で最後の夢
消えたレジェンド
晴れた童顔
独り怖れず
散るに惑わず

(じ160411)

孤高

繭の雲

あれがぎざぎざ妙義山
安達太良山はどっちのほうか
おむすび山に繭の雲
おむすび山に繭降りる
繭に包まれ蛹になって
繭を破って抜け出して
突き破られて抜け殻の
おむすび山に繭の雲
隧道トラック抜けてゆく
虫の音ばかりの道

(じ151008)

mayu

犀川

犀の川を渡ってゆく
 いつものように
 ちょっとした用事で
犀の川を渡ってゆく
 いつものように一歩二歩
 リハビリの老人とすれ違い
犀の川を渡ってゆく
 いつものように戻っても
 繰り返すだけのことだから
犀の川を渡ってゆく
 いつものように頸垂れる
 芒の群れに見送られ
犀の川を渡ってゆく
 いつものように問答無用に
 ときは行ってしまうから
犀の川を渡ってゆく
 いつものように
 ぶらり ぶらりと

(じ150824)

犀川

蘇軾(5句)

柔らかき万年筆や風光る

津波来し一万キロや春の雷

ご破算で願ひましては木の芽時

引き際を思案中かな山笑ふ

柳絮舞ふ蘇軾左遷の旅にあり

(り)

蘇軾

桃の花

わけを打ち明けられてみれば
そこにあるのは箱庭の
吹きっさらし
はるかむかしに向きあった
餓鬼大将たちの古戦場
いつもみのらぬ林檎園
そんなことにも気づかなかった
ただの空

渦に巻かれてここに在るのは
子どものころの学級委員の
宿題を果たすためなのか
幹の動脈からわかれた
枯木の枝が空にはえ出して
もやもや病の血管みたいに
よるべなく
クモは巣をつくっている

吹き出物に満ちあふれた
卑小な宇宙のお椀の表層に
いつか咲いたはずの桃の花が
散らばっている
どこへ行こうと此処にあり
どこに在ろうと尽きもせず
それでも微かな彩りもとめ
ひろがってゆく

不慣れな定年退職者の
不慣れな痴ほう老人の
さして深刻でもない孤独が
ぶつかりあっている
虫眼鏡で覗きつづけていたら
サイクロンに呑み込まれたまんま
やっと遠くから望遠鏡で
眺められるような気がしてたのに

一本のかろうじての鍬で
老いた素人農夫が
耕しはじめた
春は疾うに過ぎ去った
痩せこけた畑地を
生きものの気配失せた土くれを
植えるもの未だ決めかねて
降り下ろしてゆく

(思160908)

モモ

スライダー

ここまで来れば
最後まで
ここから行けば
最初から
どこからも
いつまでも
最初に戻って
最後から
歩き疲れて
また歩く
直球疲れて
スライダー
また投げる

(じ151202)

スライダー

忸怩

そこまで
いかなければ
なにもみえてこない
そこがどこなのか
わからない
そこまでゆくすべが
みつからない
タテにしても
ヨコにしても
ゆすっても
ひっくりかえしても
みえてこない
忸怩たり
すすめず
もどれず
じっといきる

(じ151011)

恥じる

弥勒仏(5句)

屈伸の体操始む恋の猫

春寒や裸に近き弥勒仏

春めくや千手菩薩の手も動く

夜桜や癌病棟の窓明り

無念だと外科医は逝きぬ花灯

(古150321)

弥勒仏

ひと

雲の下で想う人がいる
雲の下にその人を想うひとがいる

青空の下で恋する人がいる
青空の下にその人を恋するひとがいる

星星の下で囁く人がいる
星星に向かってその人に囁くひとがいる

(じ151205)

青空

若布(4句)

春めきて四方見渡して歩道橋

はるあさし思川には泪橋

潮寄せて桶にあふるる刈若布

強東風や寝顔のまんま乳母車

(岳150307)

ワカメ

生痕

途切れた記憶を縫い合わそうと
躍起になってもまた忘れ
頼れる生の紡錘体を
見失う
飛散してゆく時間
羅列にならぬ
生きている証し
戻ってこない月日
在るのか無いのか
流れされるままの痕跡

(じ150712)

生痕

ぼけた頭でまなこを定め
夢破れても沈んでも
懲りずに生きて
雨 雨 雨 
雪に変われぬ
ぬるい雨
そぼ降るなかを
それでも歩く
まだ見ぬもののある幸せを
噛み締めている

(じ151125)

雨

面影橋

冷たい風が
白く吹き
青空に
吸い込まれてゆく
コッペパンを
かじり かじり
ちんちん電車に乗り込んでゆく

乗りあわせた
生きあわせた
ひとの
目の位置
耳のでっぱり
立って二足歩行を
はじめてから
幾ばかりかの年月を重ね
背の傾き 皺の並び

人間ってどうして
こんな顔 こんな姿かたちを
しているのだろう
生きるかたち
面影橋の
つぎは終点

(じ150428)

面影橋
*面影橋

木綿豆腐(5句)

過ぎゆくは一番電車春疾風

水ぬるむ木綿豆腐にけづり節

童顔で逝きたる友や春の夢

麗らかやバケツに絵筆渦の色

花吹雪蹴散らしボール遊びの子

(り改170414)

木綿豆腐

薊(5句)

首傾ぐフラスコふたつ日は永し

春宵や市電溶け入る街明り

すがすがと風吹きぴんと立つ薊

自惚れも素飛ぶ蒲公英畑かな

言ひ過ぎにはらわた凭る夜半の春

(り160413)

アザミ

水たまり

しっとりと濡れた尻のでかい
道祖神のへそのまわりにへばり付いた
コナゴケが黄緑の蛍光色を放っている
にょきんと髪ふりかざしながらも
いちおうの列をなす長ネギ畑
あぜ道に戦国時代の勢力図のように
水たまりが並んでいる
さあ出来たてだ
餡子がのった草団子の山が
母屋に運ばれてゆく

(じ151102)

水たまり

オリーブオイル

持ち金すられてリヨンの街
なけなしフランで思いきり
長いフランスパンとオレンジを
何個か買い込みすし詰めの
二等列車に乗り込んで
ピレネーを越えた
ひとかけらかじり 
ひとかけら空腹のなか
あれがこの旅の始まりだったのか
オリーブオイルをかけた青さの
かけらをかじり
幾つか仕事をかじり
居づらい家の壁をかじり
むず痒い絆をかじる
本をかじり飽きもせず
スペイン語の辞書かじり
時の流れをかじり かじり
かじられた夢かじり生きつなぎ
ちぎりちぎれたフランスパンの
端っこをかじり かじり

(じ150821)

olive-oil

団子坂(5句)

遙かなるものと流氷来たりけり

グレゴリオ聖歌広ごる大枯野

夕暮や街透き徹る雪祭

冬温し猿は諸手で毛繕ひ

外套の坊ちやんぶらり団子坂

(り150306)

坂下

桃始笑

真空に満ちあふれた
宇宙のお椀の表層に
桃の花が散らばり
ひろがってゆく
どこへ行こうと果てしなく
どこに居ようと止めどなく
それでも彩りいろいろに
ひろがってゆく

(じ160303)

桃の花

雛流し(5句)

遅き日やはさみを入れるもの数多

生きざまに言葉は要らず猫柳

雛流す平安京の夜深し

仏和辞書めくりめくれて桜餅

風光る屋根裏部屋の声高し

(り160313)

流し雛

グロタンディークみたいには

もっといろいろできると思っていた
あのころ
もっといろいろしたかった
このごろ
むかしから身のタケを見つけるのが
ヘタくそだった
人生の最終コーナーは子どものころ抱いていたなかで
最もちっぽけな夢に打ち込んでみることにしようう
そして尻切れトンボでサヨナラだ
カッコウつければ孤高ってやつ
だけれど
ピレネーのふもとサン=ジロンで独り逝った
アレクサンドル・グロタンディークみたいにカッコウよくは
やっぱりいきゃしない

(じ150809)

グロ
*グロタンディーク

ホメロスよ(6首)

学期末試験できずにうなされて目覚めた今日も成績次第の会社員

何思い大使館へとかけ込んだ亡命者思いハンバーガーほお張る

本当はあきらめからはじまるのが人生かあきらめかけての悟り

出勤NHK語学講座のテキストかかえ信じてみよう継続は力

人生は旅月並みにつぶやきつつどこまで行っても乗り越えられず

とりあえず四十年は生きてきたホメロスよ後はまっすぐでいいのか

(未150222)

ホメロス

地獄まで

下り坂を降りてゆくのに
馬力はいらぬが
きっかけがなくては
ころがりはじめない
加速すればわけもなく
至りつくところまで
底まで
地獄まで
ゆける
最期のモチーフで
どこまでも

(不150125)

地獄まで

ふける

夜のなかへ
溶け込んでいった
ときは
遠くなり
あしたが懐かしい
このままであってほしく
ままのきしみがややこわく
ぎりぎりで
もうすこしどこへもよらず
なかへ
数ミリ凝縮して
ふけるなかへ

(不150112)

ふける

春一番(5句)

春一番回送列車と通り過ぐ

春一番ダンス習いにでもゆこか

卒業式幾年前か指を折り

ブランコで香りを掬う沈丁花

肩ひとつ布団ぬけ出す夜半の春

(海150128)

春の嵐

干大根(5句)

心境のさかいを跨ぐそぞろ寒

輪を離れ一人で在りぬ炉の灯り

ばあちやんも母もむすめも息白し

意のままにならず巨大なくさめせり

干大根つるし終へたり鬼瓦

(り151127)

干し大根

雪は消えていった
雨は切れていった
風は去っていった
川はがあがあ吠えつづけ
ひともがあがあ唸ってる
鴉のようにがあがあと
声を出さずに
呼んでいる
声をあげずに
叫んでいる

(じ150911改)

大ガラス

滑降

岸壁のてっぺんから
眺めおろす
直滑降の視線が
怖い
おまえは死を見ているのか
どん詰まりの先にあるもの
極限の集積点が訴えているものに
おまえは目をそらすのか

(不150109)

滑降

吐息

ボール
寝顔
鼻汁
吐息
どこまで
垂れてゆくのか

(不150110)

吐息

唐辛子の頭

ゆっくり少しずつ原点へ近づいて
ナマの自分を見つけてゆく
唐辛子の頭を突っ込んで
生暖かいトン汁に浮かびながら
ひそめて生きている
眉も 唾も 心臓も
声も 脳味噌も 鉄仮面も

(じ141217)

唐辛子

枯尾花(5句)

行きずりに触れば震ふ冬紅葉

風立ちて信濃追分枯尾花

木枯や村に分け入る宣教師

白鳥や仮の棲みかの主となり

輪を離れひとりの在処炉のありか

(り141214)

枯尾花

案山子(5句)

刈り跡は案山子ひとりの暮らしぶり

路に紋沁みる頭頂初時雨

流れあり団地の谷に冬の風

毛糸玉閉じた時間を解し居り

滑落の時一瞬に固まれり

(海141230)

かかし

振れ

浮きたてば
軸心を離れ 流れ
加速する。
時はいつも揺れている。
灯れば 広がり
眩しくなれば
閉ざす。
心はきっと戻ってくる。
きっと
(もとへと)
信じているからか
信ぜずにいられぬからか。
押さえつければとどまらず
振幅が増せば
過去へと
集積していく。

(恐150129)

振れ

風呂吹(5句)

原稿の文字敷き詰めし霜夜かな

風呂吹や妻に告げたき事あれど

大寒や悪夢の朝の目玉焼

テオルボの通奏低音牡丹雪

生垣の此方と其方寒椿

(り)

Furofukidaikon001

仁王門(5句)

冬ざれや白身の深さ茹で卵

ほどほどの歯応よろし雑煮餅

風花や筋隆隆と仁王門

何気無き言葉に出会ふ懐手

下ろし立て軍手で雪を掻き始む

(り150216)


仁王門

水に浸かった二対の脚は
ただ
そのまま
支え
ただ
そのまま
でなければならず
ただ
そのまま
つないで
いつまでもそのまま
のために
じっと据えて
流されず
流れず
そこに
踏ん張っている

(不141209)

セゴビア水道橋

みつ

水がみち水はひく
潮がみち潮はひく
財がみち財はひく
人がみち人はひく
血がみち血はひく

地にみち地をひく
空にみち空をひく
心にみち心をひく
夢にみち夢をひく
道にみち道をひく

鳥は生き鳥にしぬ
人も生き人をしぬ
野を生き野にしぬ

(じ151006)

満ちる

野良

歩き終わったひよこの子
歩き始めたあまのじゃく
ああ ここまで
でも ここから
ひょっこり家を出て
かあちゃんも
こどもらも
野良猫も

(じ150718)

野良猫