Palabra

日々「言葉」をひろっています

自由

吸盤

脚なのか腕なのか
攻めているのか守りなのか
もうそんなのに
こだわってられる
わけじゃなし
どうにもこうにも
もてあましたまんま
こんがらがったまんま
それでも蛸の吸盤は
くっついて居る
終わってもまだ

吸盤

「蛸の吸盤」は、たいていのものには吸着でき、腕が切断されてもその吸着は1時間くらいは続きます。しかし、蛸自身の体に吸着することはありません。

ランドリー

冷房からしばしとき放たれて
外界へと触覚を向けた
下町の四辻には自転車の黒マスク
葬儀屋の隣では無人の
コインランドリーが回っている
気紛れな和菓子屋は
店を閉めている
路上に貼りついた領収書
空きボトルを集めて生きる
その日暮らしの粋な老人が
街角の小さな三角公園で
読書に勤しんでいる
江戸の味 手焼きの味の
花見せんべいののぼり旗が
風に吹かれている

コインランドリー

ファミマランドリーのように、最近は、コンビニエンスストアの店舗に併設された「コインランドリー」も出現してきました。

高騰

けさはからっと晴れ渡り
空気は冷えて澄んでいるのに
あいも変わらず野菜は高騰中だ
胡瓜もとまとも人参も
きゃべつも韮も大根も
今夏は西瓜も玉蜀黍も
ろくすっぽ食えなかった

季節は巡り巡るから
それでも 続けているよ
途切れず時は流れてゆくんで
続けていくんだ
これを最後と決めたから
腹を固めて粘り切り

野菜

記録的な猛暑で葉が枯れたり、成長が止まるなどした影響で、農水省の8月6日の週の調査をみても平年に比べ、きゃべつ7割、胡瓜3割上昇など、野菜の値段の高騰が続いています。

秋刀魚

しゃきしゃきと
刀身を輝かせながら
水揚げされた初もの
秋刀魚が二本
変わらぬ食卓に
並んでいる
読まれぬブログを
更新するだけの日常
小さいけれど
住みなれては来たアパート
天然の要塞

サンマ

秋の味覚「秋刀魚」の水揚げが始まりました。日本近海に来遊する水揚げ量は去年を上回り、サイズも29センチ以上と大きいものが多くなる見通しだそうです。

青嵐

五日連続で発生した台風が
遥か南方の海洋から
不気味な風を送っている
捕まえ切れぬ青嵐の距離
夏葉が暑い地面で
蹴っつまづいている
旅の荷を降ろして
ちょっと整理整頓をするなら
このあたりしかない

拘留中の富田林警察署から遁ずらした
強制性交男が原付きバイクを奪って
ひったくりを繰り返している

青嵐

「青嵐」は、青葉のころに吹くやや強い風。「青嵐定まる時や苗の色」(嵐雪)

かたつむり

一頭の老いたかたつむりが
角出し 槍出し 
はるかむかしに
天守を失くした孤城の
石垣を登ってゆく

もはや敵は居はしない
宿る嵩ばり露に 隠れた
からだ よぢり へばり
粘りつき たれに
語られることなく登ってゆく

当てなくただ振り
しぼるだけしぼり出し
登ってゆく よぢり
へばり来た
かすかな痕跡

カタツムリ

「かたつむり」には背に巻いた殻があり、その中に内臓が収まっています。体は細長く、腹側は全長にわたる足裏で平たく、粘液を分泌しつつその上をはいます。体表も粘液を分泌して湿り、頭部に2対の触角があります。

ゲリラ豪雨

雷鳴を聞いていた
雨のあいだに
落雷を感じていた
遠さ 近さ
いにしえからあした
いまどきからの距離を
探っていた
ちょうどいい
天の雑踏を尻目に
最後の仕事に取りかかろう
ほっとけ ほっとけや
気に掛かるものはすべて
そっちのけさ
こっちにゃもう然したる
時間は残っちゃいない
ゆけるとこまでゆく
だけなんだから

豪雨

「ゲリラ豪雨」は、10~数十平方キロの狭い範囲に、時間雨量が 50ミリを超えるような豪雨が短時間に降る現象。予測が難しく、局地的で突発的に襲うためゲリラという名で呼ばれています。

靴底

未来も過去も
郷愁も悔恨も
地に接しては離れ
もうすぐ穴の開きそうな
使い古しの革靴の
底にある

認知症の母が一分ごとに
繰り返す同じ
問いにある

靴底

靴のサイズもともと寛永通宝一文銭の直径、2.42センチを「一文」とする文数で表されていたそうです。

一瞬のうちに霧がまた
山肌をおおってゆく
樹海の乱れの近傍
県境の尾根筋
消息断ったヘリコプターの
折れた尻尾
緑 赤 白
機体の残骸

いつかの光景がまた
脳裡を染めてゆく
生と死の境

はるな

きのう墜落した群馬県の防災ヘリコプター「はるな」に乗っていた9人全員の死亡が11日、確認されました。

水平

水平線に向って
小舟が1艘
ともかくも
浮かんでいる
いつ沈んでも
誰も気づきはしない
でも浮いている
まだ生きている
釣り糸をまだ
垂れている
ここまで来ている
ここからもゆく

sea-2242716_640

「水平線」は、地球の半径と同じ半径をもつ円弧。地上に立つ観察者からの距離は、5kmほどのところにあります。

上腕二頭筋

飛び込んで
わずかにしぶく
水面
からだ
浮きあがり
隆起
突き立てて
上腕二頭筋

力こぶ

「上腕二頭筋」は、主として肘を曲げる運動を行い、前腕の外旋運動を補助する筋肉。肘関節を屈曲した際によく浮き出る筋で、通称力こぶと呼ばれます。

ワイパー

強い台風13号が
雨雲をふりまきながら
自転車の速さで本土に接近している
逃げるように高速バスのワイパーが
ばら撒かれる雨の雫を
掃き落としてゆく
前をゆく車のバックライトが
霞んでゆく
愚鈍そうな雲が
闇夜に吹き出してきた

top-wiper

「ワイパー」は、米国のメアリー・アンダーソン(1866-1953)という女性が、1903年に発明しました。ドライバーがレバーで操作できる、ゴム製のブレードとバネ式アームの付いた左右に動く装置で、基本構造は、いまもほとんど変わっていません。

風呂敷

風呂敷に座右の本二冊と
メモのノートを包んでいる
これだけ、なんだと思う
人生のサイズに風呂敷を
広げてみても然したる
肩書きも 前歴も
見つかりはしない。
風呂敷の端っこを斜めに
結び合わせて、よいしょ
旅に出る。変わりばえはしない
認知症の母のいる郷里へ向かう
いつもの高速バスの旅

風呂敷

「風呂敷」という言葉が文献に現れるのは、徳川家康の形見分けの記録『駿府御分物御道具帳』で、江戸時代初めには一般化していたようです。名の由来には①蒸し風呂の床板に敷いた②湯上がりの足ふきとして使った③自分の衣類を区別するために包んだ、などの説があるそうです。

盆踊り

誰ひとり登っていない
櫓のまわりを
巡りはじめた
まだ輪にならない
盆踊り
都会の捨てられた運動場で
巡りはじめた
輪にはならない
盆踊り
歌もお囃子も
太鼓も笛の音も
聞こえてきはしない
けれどすんなり巡りはじめた
盆踊り
輪にならなくったって
戻って来れなくたっていい
わたしの歩む
盆踊り

盆踊り

「盆踊り」は、平安時代、空也上人によって始められた踊念仏がやがて、盂蘭盆会の行事と結びついて、精霊を迎え、死者を供養する行事として定着していきました。当初は新盆を迎える家に人々が赴いて家の前で輪を作って踊り、家人は御馳走でもてなしたそうです。

熱帯夜

もそっと
もわっと
覆ってくる
襲ってくる
熱は体内に
蓄えきれず
籠りきった
まま。
今日もまた
熱帯夜。

猛暑

最低気温が 25℃以上の夜を「熱帯夜」といいます。ちなみに、日最高気温が30℃以上の日が真夏日、35℃以上の日が猛暑日です。

孤独

自家製の孤独は
数ミクロンのモーターが
ぶるんぶるん
60兆細胞のなかを回って
うまれるんだ
ほら
脳細胞突起をつなぐ
シナプスまでまたきた。

(利20150529)

細胞

生体内でエネルギーの「通貨」の役目をしている「ATP」という物質を用い、細胞の運動を発生させるタンパク質をモータータンパク質と呼びます。生物の細胞内には、モータータンパクのような、運動を発生する共通の機構があり、物質の輸送や染色体の分配といった機能を担っていることがわかってきています。

青き林檎の川中島に

霧ははれても
どっかりと
濃鼠色の雲が
降りている
稲穂垂れ
青き林檎の川中島に
人馬なし。
時の流れは風となり
満ちぬ叫びは
草木をゆらす
野に放たれてゆき場なき
犬ころ一匹ぎこちなく
目鼻微かな石地蔵に
小便をひっかけた

(じ150823)

川中島

川中島古戦場史跡公園には市立博物館のほか、12000平方メートルの築山状芝生広場、自然石を配した小川のせせらぎ、かやぶき屋根の四阿などがあってのんびりできます。また、隣接する八幡社には例の信玄・謙信一騎討ちの像も。

とけてゆく
首筋にたまっている
疲れ
こころの濁り
憂鬱
いきかたへの
疑義
あすは
不凍港の
縁に寄せて
死への扉を
牛耳る輩に
牙を向けたい夜
はとけ
牙は隠れ
しゃんとして
たちどまれず

(不150126)

牙

「牙」は、一般に哺乳類の犬歯や門歯が鋭くとがって強大となり、攻撃や防御、餌の捕獲などに用いられるものをいいます。ライオンやトラなどの肉食獣の牙は犬歯が発達したもので、餌の捕獲に欠かせません。ゴリラやヒヒのような非肉食獣も雄には犬歯が発達した牙があって、おもに防御用に使われています。

花火

ホテル・レインボーの
掠れたネオンを吸い込んで
どっくろ どっくろ
夜の弁膜は
拡張型心筋症におかされたような
重いリズムで闇を
送りだしている。

ビルとビルのすき間から
どかん どかん 
遠く隅田川の花火が
顔を出しては消えてゆく

(じ150601)

2012年隅田川花火大会

台風の影響で今年は1日遅れとなった「隅田川の花火」=写真、wiki。享保18(1733)年5月28日、享保の飢饉による犠牲者の慰霊のため行なわれた水神祭で周辺の料理屋が花火を奉納したのが始まりといわれ、記録に残る日本の花火大会では最も長い歴史をもちます。

台風

風が来た
雨が来た
籠もっている
籠もってくる
怒り
悔恨
台風12号が
通り過ぎてゆく

天気

気象庁によると、強い台風12号は、午後6時、伊豆諸島の三宅島の南西40キロの海上を1時間に40キロの速さで西へ進んでいます。中心の気圧は965ヘクトパスカル、中心の北東側130キロ以内と南西側90キロ以内では風速25メートル以上の暴風が吹いています。

案山子

だだっぴろいダダの渦巻きのなかに
足を取られながら
五・七・五・七・七の案山子に
とりあえずの服を着せてゆく。
ヤ行の二つの空白を拵えた
ことばの遺伝子を
憎みながら。

(利150605)

かかし

久延毘古(くえびこ)という神さまは、古事記では「山田のそほど」すなわち「案山子」のことと説明されています。「山田のそほど」とはかかしの古名であり、久延毘古は田の神、農業の神、土地の神でもあります。

ベクトル

存在が
揺れ始め
北へ
旅に出た
連絡船に乗って
始めて
風に
触れた
十年たち
また(やっと)揺れた
かすかな触れは
連鎖していた
はずが
風はない
旅にあるのか
定住しているのか
おそらくどちらでもなく
確かなのは
錆び付いた触覚を研ぐのに
十年分の助走路を
ぼくは必要としているということ
多くを望めないから
風には触れぬ
鈍重な平穏に
ベクトルの起点を定める
絞り込まれて
起動せよ

(不150103)

ベクトル

方向と向きをもつ量である「ベクトル」は、方向性、矛先などの一般的な意味でも使われています。「運ぶ」を意味するラテン語のvehere に由来し、18世紀の天文学者によって初めて使われそうです。

風死して

風の死す町にいる
ふり絞って
いる
汗を絞り
疲れを絞り
こころのズレをねじ曲げて
軌道をととのえ
そろそろと
からだを伸ばし
準備態勢にある
気持ちの増幅を
なだめ込み
ゆるんだ弦を張り替えようとしている

(不改150123)

汗

夏の暑さの中、少しでも風が吹けばまだ心地良さもありますが、風がぴたりと止むと、もはや耐え難い暑さとなります。いわゆる「凪」と言われる状態の息苦しさを「風死す」といいます。

カンパチ

かけ出して三年
卒業をして
給料をもらうようになって
なんでも
仕事だからと割り切るようになって
めしを炊かなくなって
名刺の束ができるようになって
ただの友がやってくることがなくなって
出張とやらであちこち出回るけれど
夜の鈍行で旅をしなくなって
遅くはなったが
夜がいつでも浅くなって
銀河鉄道に乗りたいなんて
いつからか思わなくなって
通りがかりの魚屋のカンパチの姿が
なんとなく愛しくなり出して

(不150127)

カンパチ

「カンパチ」は、スズキ目アジ科の海水魚。夏が旬。正面から見ると、前額部に八の字形の黒褐色の斑紋があるのでその名があります。

過去

どこかの変曲点で
それなりのまがり方をしてきた。
記憶を手繰り寄せて
ちょうどあの曲率のあたりを
探ってみる。
辿っていたはずの道端にはもうわたしの足跡はなく
迷ったあげくに渡った交差点では
信号が無造作に点滅を続けている。
ただ そこに
覗き忘れたふりをして通り過ぎてきた小さな穴がいくつか。
ほじ開けて顔を出してたら
どんな景色が見えたのだろうか。

(恐150130)

信号

日本初の自動交通信号機は、昭和5年3月に東京の日比谷交差点に設置されました。信号の意味が一見して分かるよう青灯に「ススメ」、黄灯に「チウイ」、赤灯に「トマレ」と書かれていたとか。

カオス

どっぷりと
沈んでいたカオスの海から
記憶が姿を現したかと思うと
また沈んでいった

信じることのできぬじぶん
信じぬこともできぬじぶん
ぶらさげて とっかえ
ひっかえ くりかえし
いってはまた ひきかえし

絶望が 望みが
とっかえ ひっかえ
浮かんで しずみ
ひょっこら ひょっこら
沈没寸前の脳内宇宙
垂れ下げ ひょっこら

老いた母と田舎道
新しくできたというスーパーの
広告もって出かけてゆく

(じ150419)

Hēsíodos

「カオス」(chaos)は、秩序としてのコスモスに対するギリシア語で、混沌と訳されます。初出は前700年ころのギリシアの詩人ヘシオドス=写真、wiki=の『神統記』にみられ、宇宙形成の原初に出現したとされる「口を開けた空間」、天と地の裂け目を意味するのだそうです。

イミテーション・ゲーム

狂った犬が電信柱で
立ち小便をしている
ひっかかるわな
なわひっかける
正気の犬がベンチに
ねっころがっている

ナチスドイツの暗号を解いた天才数学者は
ホモセクシャルの罪で告発されて化学去勢
ホルモン注射を重ねる狂気にいのち絶った

正気の犬がベンチで
立ち小便をしている
ひっかけるなわ
わなひっかかる
狂った犬が電信柱に
もたれねむっている

(じ150508)

チューリング

英国の天才数学者アラン・テューリング(1912-1954)=写真、wiki=は、第2次大戦中、誰も解読できないと言われたドイツの暗号機「エニグマ(Enigma)」を解読し、同盟国を勝利に導きました。また、同性愛の「治療」を強いられて服毒自殺をとげました。

影を慕いて

さして急いているわけでも
急ぐわけがあるわけでも
ないというのに蹴っつまずいて
つんのめって ころがる寸前
なんとか踏ん張って 遥かさき
行っちまったあいつらの
足跡をふんづけている
もう聞こえるはずもない
足音に耳をかたむけてみる
あ〜あ
死んだ親父がよく歌ってたっけ
古賀政男作詞作曲《影を慕いて》

(じ150418)

古賀政男

昭和の大衆歌謡の最大の作曲家、古賀政男(1904-1978)=写真、wiki=は、昭和3年、明治大学在学中にマンドリン倶楽部の演奏会で「影を慕いて」を発表。以後、「酒は涙か溜息か」「丘を越えて」「柔」「悲しい酒」など、古賀メロディーと称される約4000曲を残しました。

ご開帳

紙コップが
からっ ころ
参道を
転がってゆく
牛にひかれて
一身二生
二生目の門前町
腐れ縁
断って
認知症の門
くぐった母みたいに
記憶を処分してゆく
安美錦みたいに
かわし土俵際
うっちゃって
人ごみ
こじあけて
さあ二生目の
ご開帳だ

(じ150417)

ご開帳

「ご開帳」は、特定の日に厨子ずしを開き、秘仏を一般の参拝者に公開すること。善光寺では、数え年で7年に一度、秘仏である御本尊の御身代わり 「前立本尊」を本堂にお迎えして行われます。 

鶴嘴

まだ歩きはじめたばかりなのだ
はいはいから危なっかしげに
なんとか立って
ことばへの一歩
ことばでの一歩
どこへもまだ
行けてはいない
たどりつける
わけもない
ことばでやっと
歩きだしたばかり
時代おくれ
なんだけれどもむかしながらの
鶴嘴だよりの露天掘り
石炭掘りみたいにことばを
さがしはじめたのだ
落盤事故で埋もれても
生きていたなら掘りつづけよう
ことばを探し ことばを掘って
自分の歩幅でことばを歩く
ことばで歩く

(じ150429)

つるはし

工事現場などで用いられる、細長くとがらせた鉄や鋼を木の柄につけた「鶴嘴」(つるはし)は、鶴のくちばし(嘴)に似ていることから名づけられました。古くは「鶴のはし」とも。

歳月

ゆき先の目途さえたたない
旅の途上にある
幾歳月

進んでいるのか
退いているだけなのか
それとも
何処へも行っていないのか
定かならぬ
旅の途上にある
幾歳月

掘り起こされたナウマンゾウのような
2メートル以上もあるなだらかに屈曲した牙に
しがみつきぶら下がっているだけの
旅の途上にある
幾歳月

のっしのっし
とうに絶滅してしまった
化石でしかないゾウに乗っかって
なのになんでか飽きもせず
のっしのっし
老いるほかなんも
代わり映えせず
旅の途上にある
幾歳月

たぶん尽きるまで
のっしのし

(じ150420)

ナウマンゾウ

「ナウマンゾウ」=写真、wiki=は、数十万年前ごろにはすでに出現し、1万5000年前の新生代更新世後期まで生息していたと考えられる、日本、中国などで栄えたゾウ。肩高2.5~3メートル。ドイツ人地質学者E.ナウマンに因んでいます。

ボルネオ(5句)

ボルネオに生きて千切るや青バナナ

天狗猿バナナはお気に召さざるか

桶抱へ喋くる海女や梅雨明けぬ

梅雨明けや煙あふるる登り窯

夏休みお仕舞の日の日も暮れて

(り)

ボルネオ島

「ボルネオ」=写真、wiki=は、東南アジア、マレー諸島最大、世界第3位の島。面積は74万6300平方キロメートルで、日本の約2倍に相当します。1941~42年に日本軍が侵攻し、1945年まで占領下におかれました。

ヘリ

アスファルトのうえ
ときおり靴の下敷きになりながら
欠片になった花びらが
こびりついている
桜の木の部品だった花が
散って地に落ち転がって
横断歩道の白線に
重なり 張り付いて
春の風 寝入る赤ん坊
抱っこした躑躅色の女が
ななめに渡ってゆく
旧街道の交差点
ヘリコプターが一機
風を巻きおろして遠ざかる

(じ150427)

ヘリ

「ヘリコプター」は、通常、独立した推進機構をもたずにローターブレードのピッチを回転中に周期的に変化させて水平飛行を行います。ブレードが機体の前方にきたときはピッチが小さく、後方ではピッチが大きくなるようにすると、後方では揚力が大きくなってブレードが浮き上がり、前方では下がるので、回転面は全体として前に傾き、前向きの水平分力が生じて機体は前進します。

片陰

陰が風におされるカーテンのように
脚を伸ばして
街をおおいはじめた
それは雲が陽をかくす
陰なのだろうか
それとも第一幕から第二幕へと
季節うつろう舞台を仕切る
お決まりの装置なのか
明に暗 山の手には下町と
街にひと くっきり分かち隔てる
線引きなのだろうか。
陰のカーテンを鳥の群れが追いかけていく
せっついていた時間がだらりとすこし
もとへ戻ろうと 夜をひきよせようと
陰がべろっと舌をさしだしてゆく

(じ150501)

影

焼けるような日盛りも午後になると、道の片側に日陰をつくるようになります。道を行く人たちは好んで、この「片陰」を歩くようになります。「午後三時片蔭を猫よぎりける」(楸邨)

青林檎

実をつけ始めた青林檎の枝に
群がるすずめの
ちゅッちゅッちゅッちゅんが
跡切れた
やってくる
そして
消えさる
いつか
透明に
なりたい
透明に
ありたい

(じ150704)

夏緑

夏の果物として親しまれてきた青林檎。たとえば極早生種の「夏緑 」=写真=は、8月上旬に青いまま収穫され、さわやかでさっぱりとした味わいが魅力的です。

コンニャク筏

ぼろぼろの鉄鍋に満たされた
天ぷら油の表層を
コンニャク筏が漕ぎ出した
求めるでなし急くでなし
ひっくりかえったところで
コンニャク筏に表裏なし

ただそこに浮いてある
それだけのことなんだ
いつもの横町の隠居がひとり
鍋の野次馬ながめるばかり
それだけのことなんだ
いまさらきゃぴきゃぴ

コロモをまとうガラじゃなし
エビの天ぷら頭付き
揚げたてを待つひともなし
生兵法は怪我のもと
何も知らずに筏を漕いで
もすこし浮かんで居たいだけ

(じ150514)

こんにゃく

「コンニャク」は、コンニャクイモが、石灰などアルカリ性の物質といっしょになるとかたまる性質があるのを利用してつくられる食物。人の消化酵素では分解できないグルコマンナンという食物繊維を含み、これが腸で水分を吸収して膨らみ便をやわらかくしてくれるそうです。

アイスキャンディ

雲の陰が尾をひきながら
街をおおってゆく
頬張るアイスキャンディが
子どもたちの口元から垂れている
私はいつからここに
座っているのか
お陰様の陰の傘
雲は空にひっかかったまんま
居てくれている
私はまだ追っかけている
日傘にまとわる陰のありかを
まだ探しつづけている
ちぎれる雲のことばの断片を

どこにもたどり着いてはいない
よいっしょ
そろそろ腰をあげないと

(じ150504)

220px-Icepop-green

1905年、サンフランシスコの11歳の少年(Frank Epperson)が、寒いある日、ジュースに混ぜ棒を挿したまま外に放置したところ、ジュースが凍ってキャンディーのようになった。これが「アイスキャンディー」のはじまりだとか。

落ちる

角顔の刑事に
落とされそうになる。
黒ぶちの眼鏡の奥から
ぼくを覗き込む。
とっくに警部の年配だが(やっぱり)
まだ巡査長で
よれよれで
ねちっこく
迫ってくる。
「やっちゃ いない」
エルニーニョ熱波の夜
イギリスで作ってもらった
19世紀のギターで
フランシスコ・タレガの
ラグリマ(涙)をゆうっくりと
弾いているとうとうとっと
混濁
からすうっと落ちかけ
た とたんの熱力学で
摂氏30度のポルカへと
変調した。
夢にうなされ剥き出された
ぼくの罪の遺伝子が
巡査長のえん罪づくりに
荷担しだした。
刑事のせりふの近傍で
時間を微分し
転向の曲率に仕立てられた
ブラキオサウルスの20メートル近い首を
自分の捨て場を探りながら
滑走してゆく。

(利150625)

Brachiosaurus

「ブラキオサウルス」は、1億5000万年前後(ジュラ紀後期)に栄えた大型恐竜。地面から頭までの高さは12mほど、前肢は4m近くあり、キリンのように頭を高くもちあげていたと推定されています。

根が生えてゆく
まぜ合いまざり 引いて
引き 足し足しあわせ
引いて足す
納豆の糸みたいに
伸びて絡み
土に立たせる
樹冠広げて
屋根瓦 二階 三階
背を伸ばし
幹は太る 
年輪刻む
動かぬように
動けぬように
一本の木
根っこじゃ
動きは取れず
寝ころびたくても
立つしかなくて
いたたまれなくとも
一本の木

(じ150519)

木

木は古来、多くの民族が、地と天空をつなぐ axis mundi(宇宙軸)と考えられました。ミルチア・エリアーデはこれを《中心のシンボリズム》と定義しています。

レントゲン

めくってゆく一枚二枚
めくられてゆく一枚二枚
そら見えた レントゲンの写真だ
だれだってあるものがあって
ないものはない
うごいているものはうごいて
とまってしまえば それまで

それだけのことなんだ
皮をひんむいたらね

脳圧が最大限まできて
こりゃヤバッてとこまできたら
破裂したらそれまでって
開き直るしかない
年かさねるごとに覚えてきた
ぎらっ 開き直れば空の下
隣の中学校の校庭からいつものように
子どもたちのつんざくような
騒ぎ声が押し寄せてくる

(じ150515)

x線

X線はドイツのヴィルヘルム・レントゲンが、1895年に発見した特定の波長域(1pm-10nmほど)を持つ電磁波。これを目的の物質に照射して、透過したエックス線を写真フィルムなどで可視化します。

あした

海のうえまで雲の手を伸ばしていこう
海の向こうまで雲の脚を突っぱっておこう

そして

気まぐれのようにときおり射しかける
陽光のきらめきをたよりに

あしたも生きてみることにしよう

(じ150518)

太陽

「陽」とは、日の照らすこと、明るいことですが、中国古代の哲学では、宇宙の一切は陰と陽の2つの対立した気によって生成変化消長すると考え、陽は積極的・能動的なものを示します。漱石の「虞美人草」に「静かなる夜を陽に返す洋灯の笠に」とあります。

かりかりっ と
ころがり 硬直した蝉の胸が
折れてゆく。
踏んだ靴底からアキレス腱をつたい
腹から胸へとよぎり
届いた。
遺伝子の設計どおりに
張られた薄い鼓膜を
胸筋でふるわせ
さっきまでつくっていた。

(利150531)

セミ

セミの聴覚器官(耳)は、第2腹節腹面の両側にあり、薄くて透明な鼓膜(鏡膜)と、その側方にある聴器嚢からなります。鼓膜上に伸びる聴突起から聴器嚢へと振動が伝わり、発音中に雄は聴覚器が働かないようになっています。

午後

サオダケーの
一声が通る。
にわかに煙が
湧き
旗がひらめく。
上陸したばかりの台風の
単眼の下に蝉時雨が降っている。
「自動詩作装置」が一台
博物館に置き去りにされている。

(利150604)

竿竹

サオダケ(竿竹)を載せた車で住宅地をまわり、客の求めに応じて竿竹を販売するのは竿竹商法とも呼ばれます。安い値を提示して購入を呼びかけながら、実際は法外な価格での購入を迫るなどトラブルが起こっています。

ソリトン

波を打つ山並
波を越えて山波
押し寄せる波
ぶち当たる山
ソリトンがやってきた
波を越えて
山となって
ぶちかましに
きた

(じ150702)

ソリトン

「ソリトン」は、波形や速度を変えずに伝わり、衝突しても互いに波形が変わらず通りぬける性質をもつ波。1965年にアメリカのザブスキーとクルスカルが発見しました。津波もソリトンの一種です。

おどり

年に一度の祭りが降ってきた
女岩に男岩 
おどる阿呆がわいてくる
おしゃべりよりも文字よりも
おどっておどり
いのちの種をまくおどり
縄文のむかしもひとびとは
おどってはねて
はねられて
けっつまづいておどり立つ
とんでとばしてもえあがり
うたいひめいかよがり声
いのちの種をまいてはおどる

(じ150517)

踊り

「おどり」つまり、躍り、踊りは、古来、宗教と深く結びつき、巫女や僧侶などの宗教者たちによってになわれ、伝承されてきました。歌舞伎へと発展することで、宗教から芸術へと脱皮していきます。

ネジ

ネジを巻く
ちょっぴり緩んだ
ネジを巻く
初夏の日差しだけの道端で
ネジを巻いている
マゾヒズムの好悪だけの荘厳なる儀式を終えて
ネジを巻く
やせ我慢の幸福が洗濯竿にぶらさがっている下町で
ネジを巻いている
奴隷なる未来 草枕のユートピアで
自意識のネジを巻いていくのだ
排泄を待つばかりの美しき退屈
百里の半ばに九十九里がおかれている
道半ばにてネジを巻いてゆく
大いなる死者たちが茶飲み話をしている
玉は砕け散っても崩れぬ屋根瓦の軒先で
私はネジを巻いている

(じ150509)

ネジ

円筒表面のつる巻線に沿い、一様な突起をつけた部品を総称して「ネジ」。漢字では、螺子、捻子、捩子、根子ながあてられます。また、動詞「捩づ」の連用形でもあります。

黒幕

メスがメスを抱え込み
ワギナとワギナを摺り合わせる
ほかほかっ
を繰り返し
ボスの妃デラと緊密になったヒカは
デラの死のあと一躍のしあがり
長男イオをボスに据え
次女の長男ニオをその後継者に定め
一七年間の安定政権を築いた

(利150609)

ヤク猿

ニホンザルは1960年代までは、オスのリーダーが統制する順位制社会を作っているとみられていました。が、いまでは群れの中心はむしろメスで、母から娘への血縁関係を軸に成り立っていると考えられています。

本棚

そこには
ぼくの混沌がある。
一冊捨てる
二冊古本屋へ持ってゆく。
ずらす
三冊分の隙間ができる
四冊買って
差し込む。
ぼくも少し
ずれた
気がする。

(利150527)

ほん

いま一般に見られる「本棚」が普及したのは大正時代後半に入って、関東大震災を契機に広がったと考えられています。当時はもっぱら読み終えた本を分類して収めるために利用していたとか。

音楽

深さ0.1ミクロン
幅0.4ミクロン
長さ5ミクロン
手のひらサイズの銀盤に
渦状星雲のように刻まれた60億個の凹みに
1ミクロンに絞った
薄青いレーザ光の針を
のせる。
干渉回折のシグナル。
ゼロ・ワン・ゼロ・ターン・タ

(利150603)

cd02

CDなどのディスクには細かいくぼみ(ピット)が彫られ、そのパターンによってデジタル情報を表現しています。

クラゲ

透明に泳ぐことなんて
かあちゃんの腹のなか
えら呼吸をしていたときにもう
わすれちゃってたんだ

何十億年も前に海水のなかに
出現したアメーバだって
へなへなのクラゲだって
透明になんてなれやしない

アメーバのまんま人間になって
子どものまんま大人になって
覚えたことば忘れていって
それでも羊水また泳ぎたくって

生きてゆくこと消えさること
覚えたことは忘れるために
生まれたときからしょっぱい人生
透明に老いてゆくことなんて

(じ150510)

クラゲ

「クラゲ」は、漢字で書くと水母。体はゼラチン質で柔らかく、透明。多くは傘のような形をしていて、傘の内面中央にある口、続いて胃などがあり、傘縁から触手が垂れ下がっています。