Palabra

日々「言葉」をひろっています

自由

秋高し

そろいもそろって
穂首刈り跡点々と
そろいもそろって
いつもの列をなし
そろいもそろって
刈田に稲の天日干
そろいもそろって
烏数匹ねらってる
そろいもそろって
稲の孫生ひつじ生
そろいもそろって
人生の切れ端たち
たむろして秋高し

(じ151018)

いね

林檎

丸みは
局在する言葉の鎖の寄せ集め。
微塵の意志を
無限にこびりつかせて
身を被い
球形を
なす。
頭から広がる
可附番無限の点列は
尻に近づくほど密になり
紅い頬は
黄地に層を重ねて
表情をつくり
酸いと甘みの微粒子が
均衡しながら
おれの嗅覚を刺す。
増殖するインターネットの如く
網羅し尽すことによって
のみ
ある。

(デ150402)

りんご

ふり

筋が通っているのに
よりどころがぐらぐらして
どこへでも行ってしまう
完全だと思いこんでも
はっきりしているのは確かめるすべのないことだけ
だから人間はわからない
漠然と片づけてみるのだが
居場所のわからないことさえ気づかずに
道はなくなってしまったと思いこむ
確かだなんて思っちゃいないんだろう
不安を飲み込むふりをしやがって

(不141220)

pretender
*by Soren Dreier

ゴジラ

そこにどれだけの影が
生えているのか
雪のパウダーが纏いはじめた
寂寂たる山山を横切って
高圧電線
いつしか現れ
なぎ倒してゆく

(じ160122改)

ゴジラ

小雨を背に一本の鍬で耕してゆく
なにも植わっていない痩せた畑を
野良を知らぬ老いたしろうと農夫が
いまだ植える作物(もの)も決めかねて
凍みついた荒い土くれに
へたれた腰つきで
鍬を降り下ろしてゆく
生きものの臭いない地上に
一本だけの鍬を
踏ん張れるだけ踏ん張って
刻んでゆく
バケの皮はぎ落とされ
逃げまどって握った一本
よろよろ曲がりくねりながら
かろうじてのひとすじ
鍬を振り下ろしてゆく

(じ160127改)

鍬

ノート

荷をほどいて
もって来たもの
みんな並べてみる
捨ててきたもの
埋めてゆく
後悔を蹴散らしゆく

携えてきた本
棚に並べ替えてゆく
途ぎれ途ぎれ
つながらなくなった文脈
追っかけてみる

置き去りにしてきたノート
めくってみる
拠り所たよりないここ
でも書き継いで
ゆくしかないここ

(じ160324)

ノート

唐辛子

ゆっくり少しずつ原点へ近づいて
ナマの自分を見つけてゆく
唐辛子の頭を突っ込んで
生暖かいトン汁に浮かびながら
ひそめて生きている
眉も 唾も 心臓も
声も 脳味噌も 鉄仮面も

(じ141217)


唐辛子

刀鍛冶

雨の刀鍛冶が
とってんかんとってんかん
火花を散らして
金槌を打ちつづけている

MRI画像のように
夜の車窓を輪切りに映しだして
路面電車が雨を散らしながら
私の内臓までたどりつく

とってんかんとってんかん
硬直したままの消化管を
雨の刀鍛冶は打ちつづけている
とってんかんとってんかん

(じ150423)

刀鍛治

息子

わかるか それが運命や
ようがんばってる
だれもかれもがは できへん
おかあはいつも 感激してる
元気づけられてる
しんどいけど がんばってや
まっさらに おまえにつながる道や
生きてる 生きてるか

(じ141218)

息子

法則

あてはめるとはどういうことか
抽象化するとはどういうことか
表面はどうしてこんなにはっきり見えるのか
表面をある一定の対応物で適応させていくことが
いかに意義のあることなのか
表面にはどうして法則性があるのか
法則とは真か偽か
それとも生活の狭い適応なのか

(不141210)

法則

再出発

世界の根本が揺れ動き始めたときから
ぼくは出発点を見つける以外に道はなくなった
これもただおなじことになむはべる

(不141212)


スタート

いんぽーたんす

常を超えること
全体を見ること
ちっぽけな切片は必要ない
全体を見よ
宇宙的な存在感をもて

(不141213)

NASA-EARTH
*NASA

水に浸かった二対の脚は
ただ
そのまま
支え
ただ
そのまま
でなければならず
ただ
そのまま
つないで
いつまでもそのまま
のために
じっと据えて
流されず
流れず
そこに
踏ん張っている

(不141209)

橋

望近鏡

トミー・ジョン手術を受けた
大リーグの剛速球投手が
もとの160キロ台を目指して
時速10キロのキャッチボールから
やり直すように
はじめてみたい

望遠鏡をずっと
逆から覗いていったら
人生を逆に
生きていったら
どんな景色がひらけていくのか

望遠鏡

だらりぶらさがって
ときおりやってくることがあるんです
どこからといわれても
こたえきれない声が
「しっぱいだったよ。おまえのじんせいは」
ってだれかがいっているんです
すぐにそれがじぶんじしんの声だってわかるんだけど
そんなこといわれたってもう おそいんです
せめて100万年まえにいっといてくれたら
よかったのに

(じ141216)

声

一本

ぼくの軸心から
のぼって消えた
ものがあった
一本すっと
抜けていった

(じ141215改)

大煙突




迷路

もとめたものが何だったのか
見つけたくてまた
迷路に足を踏み入れた
まだもとめているのか
確かめたくなって
はたはた足を
ばたつかせている
もとめていた言葉とまだ
出逢えなくて
のそのそとまだ
生きている

迷路

風化

首が立っている
砂時計のような格好で
岩と岩をつないで
いつかは折れそうで
倒れずにいて
風化してゆく。
首根っこの歳月
つかむことなく
とらまれるでなく
不恰好をバネに
立っている
でかい顔して
削られてゆく


岩

釣瓶落とし

ときおり軌道を
下りたり
飛び移ったり
横縞のシャツ
緑のリュックサックを
しょった少年が
山手線の鼓動に
揺れている
釣瓶落としのような
顔をした心臓も
揺れている
弔い歌が逆三角形に
響いている

釣瓶落とし

ざざめいて

射程圏の水面が
ざざめいている
死 引退 廃刊
つぎつぎに消え
沈みゆく
きれいさっぱり
かっさらわれて
ただ水面
ざざめく雨の音
味方はなく
敵に回そうにも
敵もいない
どこも見えない
何もないなら
どこまでも行くしかない
どこまでも行けばよい

波

シェルター

交差点から潜り込む
エレベーターを乗り継いで
地下鉄のホームまで出る
ここより下は
わたくしが内在する
シェルター
車内では黙って
つり革が振り子になって
揺れている
居るはずの乗客は
もうすでに行ってしまったのか
見えない

シェルター

コキリコ節

シベリアから数千キロを
渡ってきた雁たちは
悲しみを語らず
ただ唐辛子の利いた声で
コキリコ節を謡う。
声を割り振るトリミングのリズムは
生への陶酔によるのか。
まだ 意味にたどりつかない
言葉の群れが
ぼくの脳に浸潤してくる。

(利150615)

こきりこ節

歴史

秀吉の陰茎はぼくのより
長かったのか短かったのか。
構成する左右二本の海綿体は
うまく膨張していたのか。
マムシ、スッポン、オットセイを
貪っていたのか。
DNAの複写機構に
転写ミスはなかったのか。
もっとしゃんとしてたら
なにもかもが違っていたはずなのか。

(利150530)

秀吉

陶酔

どんなεにもかならずδがあって
おさまるところにおさまるなんて
感受性に支配されているヘボな役者の自己陶酔の演技
みたいなもんでだいたい
あんたが見渡せるあんたって
胸からしたと両肩からさき。
肝も心も尾てい骨も背中だって頭だって
痛てえときぐらいしか
あることに気づいちゃいねえじゃねえか。

(利150623)

陶酔

開き直って

見えないふりでなく
見なければならない
必然性も
必要も
義理も
ないことをしるべし
やるべきことを
その方向に
もう迷わず
どうなっても
たかがしれていると
開き直って

(不150106)

開き直り

秋刀魚

テーブルの皿にまた

二本

平行に

ならんでいる。

遺伝子の運びやの

えさ。


(利150525

秋刀魚


占拠

なにが私を占拠してきたのか
なにをしても
なにをしなくても
な の に
もう懲り懲り
ガラじゃなし
見据えず
ぼさぼさで
安全弁を取り去り
捨てて
かかろう

(不150111)


占拠

やろう

それでも
まあ
いきましょう
おもいつめず
いいですよ
べつにと
いっている
ほんとにそれでいいですよ
それで
こだわること
ないのかそれで
いや
べつに
まえをみてたら
べつにだったのだから
そうだった
やろう

(不150124)

働く

白い空

降りそうで降らない
白い空
直球 ホーク スライダー
なにをなげあげたところで
すうっと
迷わず
ゆけ
吸い寄せてゆく
だけ
水不足の焦れったさの
そぶりもみせない

(不150116)

白い空

ひとつぐらい

まずはゆくあたりを決めて
静かにあおぎながら
はじめよう
人生論を説くつもりはないが
すべては蓄積だからと
信じてみよう
そっちを向いたら
簡単には逸れないで
最後までいってみよう
ひとつぐらい
ひとりぐらい
いつまでも
どこまでも
こだわって
あきらめず

(不150104)

人生

蝉時雨

透明な顔を
空に向ければ
朝靄のなか
あっという間に
季節はずれの
蝉時雨

せみ

時制

とらえきれない標的
とらまえられぬ人
とりつく島
とりつくろう言葉
ただ忘れるだけの現在形
ずっとやって来ている未来形
まだやったことない過去形

未来

破局

しずけさのなか
かすかな風をたよりに
ぼくはいる
このあたりは
けっこうな景色で
見通しもまずまず
執着心をばねにあれこれと
つづいてもいる
満つる と
そんなころあいが
破局の登場にはぴったりで
ぶつかって
ぼくの内臓は破裂して
とうぜんに視界は失せる
瞬時に跡形もなく

(不150107)

破局

塔が立つ
まっすぐに塔が立つ
これという目的があるわけでも
これという理由があるわけでもなく
塔が立つ
鉄骨製でも
雪像でも
現実でも幻想でも
どうでもいいがまっすぐに
塔が立つ

炎天に煙草の煙が上ってゆく
夏の夜空にただ一本突っ立って
屍が積み重ねられて
塔が立つ

(不150108)

塔

発明

ATCGGAT
TAGCCTA
ぼくのからだのすべての遺伝子の文字が
スパコンからながれ出てくるときって
籠毛与 美籠母乳 布久思毛与
コモヨ ミコモチ フクシモヨ
音をつらねて歌われた春の求婚譚が
輸入漢字との日本的イオン結合を遂げて
以来のできごとなんだよ きっと

(利150607)

雄略

ダー ダー ダ ダ スコ ダ ダー
  夜はどこかへ更けて
  賢治の原体剣舞連の
ダ ダ スコ ダ ダ
  線路をたたく電車のリズムも
  更けると激しく
  くっきりと
ダ ダ ダー スコ
  夜の女は叫んでいる
スコ スコ スコ ダ
  悲痛も憤りも
  快楽も
  ただの音で
スコ スコ ダー スコ
  闇に決して溶け込まない
  音の泡沫が漂っている

(不150118)

原体

ハレ

最後はすかっと
空と海
水平線を
しばらく見ていなかった

霞がはれるには
じたばたしたり
じっとしたり
ともかくも
時間を頼りに
待つだけだった

(不150115)

ハレ

地震

水を汲みに
充電器を買いに
行列がつづいている
埋まった車
土砂崩れ
倒壊 安否不明
停電2万5000世帯
未知の活断層が
動いた

新聞

辞書

もすこしは
ぼくの辞書に
ことばが入っていると思っていた
のに
掬えない
みいだして
貯め込むだけに
執心しようとしている
ことばは世界
世界はことばの
一対一写像ならば
ひとことは
世界の濃度を確実に増しているはずなのに

(不150119)

辞書

交差点

交差点をいつも
斜めに渡ってきた
そして行って帰って
また渡っている
前へ進んでいくって
後ずさりすること
気を配らなくたって
戻ってまた渡る

交差点の向かいの
ラーメン屋は
いつの間にか
店じまい
しているんだけれど

交差点

昇華

窓を覆い尽くしていた氷の羊歯が
失っていく
失われていく
形を
姿を
溶け
果つ
枯れるよりも早く
空気に昇華してゆく

鳥の群れが
空から落ちてくる
オスプレイのように
空からはがれて
脱皮してケリ
つけるには
狂うか歌舞くか
やっけっぱちるか
顕彰のない最後の旅がはじまる

(じ150520)

昇華

鉄仮面

ゆっくり少しずつ原点へ近づいて
ナマの自分を見つけてゆく
唐辛子の頭を突っ込んで
生暖かいトン汁に浮かびながら
ひそめて生きている
眉も 唾も 心臓も
声も 脳味噌も 鉄仮面も

(じ141217)

鉄

しずく

絞り出した
あとには
もう残っていない
と ふり返れば
実はまだ ある
まだ絞れる
存在とは
無限の連鎖
掬い尽くし焼き尽くし
使い尽くしやり尽くし
それでも残り
それだから支え
まとわりつく
一滴に満たぬ
しずく
こころを使い尽くしたあとの涸れを
癒しにお節介に
滲み出してきやがる

(不20150120)

し

枝豆

枝豆をはじき
口のなかに飛び込ませる
口蓋を二度三度と
テンポよく打つ
歯触りは
あしたに響き
疲れの意味を分析させる
つまみでなく主役
ビールには大根が
こんやはあう
電話のベルがまた
列車の音を聞きながら
受話器を握る

(不150117)

枝豆

崩壊

岩山に内包された
トンネルの中を走っている
そういえば
一瞬の岩盤の崩壊
そして埋める瓦礫
余別発七時五分小樽行き
路線バスに乗用車一台
二十人の圧死
無念の発破 発破

岩盤

ハードル

スターティングブロックを蹴ってから
もうどれくらい経ったのだろう
踵ひっかけ太ももぶつけ
アキレス腱を痛めながら
ハードルを越えてゆく
足を引きずり
とりあえずまた一台
越えてゆく
いくつ越えてもまた
前にはハードル
越えてしまえば消えてゆく
そしてまた一台
もとめていれば
また越える

ハードル

甘い生活

去年今年
虚子のいう貫く棒など
見えはしないし
倒せもしない。
だから
というわけではないが
フェリーニのおんなたちよ
ぼくはきょうから
万歩計の一歩を踏み出すことにする。

(利150612)

甘い生活

脱臼

おそらく 
そっからはじまるんだ
なにもかもかなぐりすてるなんて
できはしないけれど
なにかほどけたみたいな
あきらめのような
ひらきなおれたような
そんなあたりから
はじめよう 
脱臼
しちゃって
ちからはぬけて
もうほしがらず 
まよっても
まどわされずに 
たんたんと
だれにもいちどおとずれて 
もどってこれない
そのときまで

(じ150505)

脱臼

サンゴ

海に潜って
サンゴ礁に刻まれた
沈黙の文字を解読している
クラムポンは無作為に
泡を吐きながら
自慰に耽っている
さらに潜れば
百年海藻に絡め取られ
浮上できない潜水艦

さらに潜って
マントルからの噴流が発する
声にならない吐息を
翻訳してみる
口語の優しさと
文語の厳しさを
織り交ぜながら

サンゴ

ドローン

ようやく種まきのときがきた
枯葉の言葉の種を
まいてゆく
力拳こぶしを作れない
肘の曲がりで
まいてゆく
老けたからだが勝手に
まいてくれる
飛べないドローンの風が
まきちらしていく
芽を吹くあてなどないさ
顔色で分けたって
しようがない
しっかり居ようとしてれば
穫れるもの
そのうちに

ドローン