Palabra

日々「言葉」をひろっています

俳句

あぶくぽこぽこ(12句)

雛流す平安京の夜深し

仏和辞書めくりにめくれ桜餅

小諸なる古城ざざめく花盛り

屋上のクレーンくの字春の雲

猩猩緋色のくちびる瓜をはむ

生きものに雌と雄あり汗香る

サイホンにあぶくぽこぽこ涼新た

蟋蟀や蒸気機関車脚いくつ

爆弾の澄まし顔して檸檬かな

迷ひ入る糺ノ森や照紅葉

卓袱台に蜜柑の山の生まれたり

生国の貌で水鳥戯るる

(り100号記念170813)

あぶく

「いくら勉強しても、まったく展望が開けなかった。“登れども登れどもまだ麓かな、ジッと手を見る”の心境だった。でも、まだ己の限界まで死力を尽くしたわけではない。やれるだけ闘って数学という戦場で名誉の死を遂げよう。だって、人生はたった一回きりなのだから」(秋山仁の言葉) 

ゲリラ豪雨(5句)

遠雷や畦道戻るランドセル

病葉に鞭打つゲリラ豪雨かな

地団駄を踏めど動かず蝸牛

老耄の母の手に座す雨蛙

呼吸器の繋ぐいのちや大西日

(り170714)

ゲリラ

最近、ゲリラ豪雨らしきがすこぶる多くなって来ているように思います。予測が難しく局地的・突発的に襲うゲリラにたとえて、十~数十キロ範囲の狭い地域に時間雨量が50ミリをこえるような豪雨が短時間に降る現象を、2008年夏頃からこう呼ぶようになりました。 

青田(5句)

安曇野や寄せては返す青田波

序破急を競ふ線香花火かな

風の香や記憶は寄せてまた消ゆる

水を打つ母は後家御のまま五年

認知症深まる母や門火燃ゆ

(り170814)

青田

青田は、稲の苗が生育して青々としている田んぼのこと。「山々を低く覚ゆる青田かな」(蕪村)

沢蟹(5句)

友逝くやらせん階段蝉時雨

御巣鷹に沈思黙考沢の蟹

ためらひを楽しみながら踊の輪

蔓さぐり笑ふ西瓜を刈入れり

送り火の一期一会に送られて

(り160813)

沢蟹

沢蟹=写真、wiki=は、一生を淡水域で過ごす日本固有のカニ。子どものころつかまえてきて、揚げて食べたりしました。「沢蟹のあらがふことを愛(かな)しとす」(富安風生) 

眼(5句)

水打ちてほどなく四十九日かな

単眼をはきと颱風迷走す

秋うらら二十歳の頃のきみの肌

ひろごれる雲の船団遠案山子

真田藩十万石や稲すずめ

(り160913)

眼

台風の中心付近にある台風の「眼」は、気圧の最も低い部分です。下降気流があるため雲が切れて青空が見られることが多く、風もが弱いのですが、眼の周りには激しい上昇気流と発達した積乱雲が壁のように取り巻き、猛烈な暴風雨となっています。台風の眼の大きさはふつう直径 10~100キロくらいで、絶えずその形や大きさを変えています。眼は、台風の発達期から最盛期には小さくはっきりとした円形となり、衰弱期になると大きくなって円が崩れていきます。 

ばった(3句)

ほうけ立つ裸体の老母洗ひ髪

ばつたにもきつたはつたのありしかな

生きかたは百万通り雁渡る

(り全)

ばった

「ばった」は後肢が発達していて、キチキチと羽を鳴らしてよく跳びます。また、古道具商の言葉で投げ売りの意にも使われます。 

ホメロス(5句)

古本の愛しきにほひ秋蚊鳴く

爽涼やホメロス叙事詩読了す

まだ片目だけの達磨や秋気満つ

軍馬なき川中島や稲架襖

ぶら下げてコンビニ袋秋旱

(り12)

ホメロス

「ホメロス」=写真、wiki=は、前8世紀後半ごろのギリシャの詩人。小アジア西岸地域に生まれ、盲目の吟遊詩人として各地を遍歴したと伝わります。二大英雄叙事詩「イリアス」「オデュッセイア」の作者で、古来最高の詩人とたたえられています。

コスモス(5句)

秋桜や風の濁りも気にとめず

懐の寂しさつげるちちろ虫

しぶ柿やいがぐり頭にきび面

案山子にもボロ着ふだん着一張羅

迷ひ入る糺ノ森や照紅葉

(り161013)

コスモス

「秋桜」(コスモス)の語源「コスモ」(cosmo)は、ギリシャ語で「宇宙の秩序」を意味するそうです。熱帯アメリカ原産で、メキシコからスペインを経て明治20年ころ渡来したとされています。 

釣瓶落し(5句)

魚屋も八百屋も釣瓶落しかな

柿吊す茅葺屋根や雨宿り

秋深む字引に言葉拾ひをり

犀川に一番星や芒散る

影深く降ろし息つく刈田道

(り161114)
釣瓶落とし

「釣瓶」は、水を汲むために竿や縄の先につけて井戸の中におろす桶。釣瓶が井戸に滑り落ちるように、秋の日は一気に日があっという間に暮れていきます。

長き夜(5句)

鰯雲弾きて飛ばす高笑ひ

黄金の里に新参稲雀

新蕎麦や笊にはじける柳腰

左遷さる杜甫の長き詩長き夜

水澄みて見えざるものを眺めをり

(り151012)

長き夜

「杜甫」(712-770)=写真、wiki=は、若いころ科挙に落第。40歳を過ぎて仕官しましたが、左遷されたため官を捨て、家族を連れて甘粛・四川を放浪、湖南で病没しました。 

クラーク(15句)

うめきうめきいま流氷は接岸す

友逝くや根釧原野揚雲雀

蒲公英や屯田兵の村に入る

クラークの指さす彼方柳絮舞ふ

しんしんとしんしんと沁む新樹光

軽鴨はでんぐりがへし蓮開く

秋麗ポプラ並木の影太し

けちけちとせずに積りぬ黄落期

さくさくとときは刻めり枯葉道

ほつとけや散乱反射風花す

ひとしづく雨ひとひらの雪と化す

鐘響く雪に音なし時計台

窓をぶつちんちん電車玉霰

原色の屋根に波なす氷柱かな

暮れ初むる街透き徹り雪まつり

(り170528)

クラーク

「クラーク」(William Smith Clark、1826-1886)は、札幌農学校(北海道大学の前身)の創設者。在職1年、1877年4月帰国にあたり、“Boys, be ambitious for the attainment of all that a man ought to be.”(青年よ、人間の本分をなすべく大望を抱け)の名言を残したことは有名です。

橅占地(5句)

曼殊沙華老母虚ろな眼の在りか

長き夜やゴッホ自画像描き居り

修験者の山のふところ蕎麦の花

したたかに生きる強さや橅占地

稲すずめ散らし手を振る街宣車

(り)

ブナシメジ

生きた木の根に生えるホンシメジと違い、ブナシメジ(橅占地)=写真、wiki=は、倒木や枯れ木など死んだ木から栄養を取って成長します。 

刈田道(5句)

魚屋も八百屋も釣瓶落しかな

柿吊す茅葺屋根や雨宿り

秋深む字引に言葉拾ひをり

犀川に一番星や芒散る

影深く降ろし息つく刈田道

(じ161114)

刈田

刈田道は、稲を刈りとった田を通る道。畦では稲が干され、収穫を終えたあとのほっとした田園風景がありました。 

石ぼとけ(5句)

生国の貌で水鳥戯れり

一陣の風追ふ鷹や古戦場

から風や耳半分の石ぼとけ

新聞の見出したてよこ置炬燵

とろとろと冬至南瓜はまろまりぬ

(り161222)

石ぼとけ

人情や風流を解しない人、融通のきかない人をたとえて「木仏(きぶつ)金仏(かなぶつ)石仏(いしぼとけ)」ということもあります。 

落花生(5句)

こだはりのうどん打ちあげ秋気満つ

落花生剥くが仕事や母惚く

稲雀理屈ありげに集まれり

一夜にて夜店陣取る酉の市

埋火や太郎次郎は要介護

(り)

落花生

落花生の組成は、100グラム中タンパク質25グラム、脂質47グラム、糖質16グラム、無機質ではカリウムの含量が比較的高く、ビタミンはB1、B2のほか、特にナイアシン含量が多く、栄養的に非情に優れた食品です。

寒卵(7句)

爆弾の顔して澄ます檸檬かな

土踏まず踏んづけ歩く刈田原

躓きつつつつと歩む寒すずめ

板チョコの割れる音して冬来る

鷹匠の髭はさほどに濃くあらず

洗濯の硬き湿りや冬ざるる

骨の無き輩でありぬ寒卵

(り151112)

寒卵

「寒卵」は、寒中に産んだ鶏卵。滋養が高く、日もちがいいとされます。〈寒卵薔薇色させる朝ありぬ〉(石田波郷)

「白首」(10句)

蹴上げれば枯葉天狗の如き舞

生きづらき巷に盛らる落葉搔

吊橋に吊られしままに山眠る

彼の国の顔で水鳥戯れり

衛星は軌道離れる月冴ゆる

白首の練馬大根引き抜けり

狩人は戻り飯場の主となり

大根を角材として食とせり

凍鶴やいのち一つの点となる

鍋焼や天に一筋息を吹き

(り151213)

白

「白首」(しろくび、しらくび)は、おしろいを首筋に濃く塗りつけたひと、下等な売春婦のことをいいます。小林多喜二の『蟹工船』の中では「ごけ」と振り仮名されています。 

師走空(5句)

天井は雲の底なり枯野原

爽快な孤独は愉し冬星座

万国旗そ知らぬ顔や師走空

向き合ひてほうけし妻夫咳こぼす

年暮るる老母入れ歯を探しをり

(り1803)

師走

「師走」の語源については、師(僧)が読経などの仏事を行うため忙しく走り回るから、という平安時代からの説(「色葉字類抄」)がありますが、これは必ずしも言語学的に根拠があるものではないようです。当時はすでに語源ははっきりしていなかったことになります。

新春(5句)

犀川も戸隠山も寒靄

除夜の坂呆けし母と長命寺

禿頭に香煙浴びて初詣

去年今年つり橋ゆられゆらしつつ

手すき紙の背筋すっきり筆はじめ

(り170113改)

新春

長野市にある「戸隠山」は、海抜1904メートル。全山が凝灰岩質集塊岩からなり、のこぎり状の崖が連なっています。古来、山伏の修験道場として知られています。 

カント(5句)

大北風尻で蹴散らす道祖神

繭玉や餓鬼大将も知りし恋

外套のカント時計を気に掛けり

我が事の如く語らふ藁仕事

大寒の奏づる音に耳寄せり

(り160112)

カント

自然科学的認識の確実さを求めて認識の本性と限界を記す批判哲学を創始したイマヌエル・カント(1724-1804)は、青く小さな、でも輝く瞳をもった小柄な人物だったとか。時間に正確なので、散歩で見かけたカントの姿を見て時計の狂いを直したという有名なエピソードもあります。 

半寿(5句)

本年もまずは左手初手水

母半寿霰撥ね除け徘徊す

悴む手成らぬ想ひにしがみつき

松下しごみの曜日のごみの山

壁土の零れる蔵や雪起し

(り)

碁盤

「八」「十」「一」を組み合わせると「半」という字になることから81歳を半寿といいます。将棋盤の目が「9×9=81目」なので盤寿という別名もあるそうです。

日脚(5句)

灯台やいま流氷は接岸す

雪を踏む音や交番赤洋灯

冬ざれや白身の厚き茹で玉子

声寄せて伸びる日脚や通学路

春雨や魔女の一撃妻眠る

(り170213)

日脚

「日脚」は、太陽が空を移り行く動きや日の出から日没までの長さのことをいいます。日脚伸ぶは太陽が空を移動する足が伸びたように感じられるさま。

雪だるま(5句)

息の白確かめながら一歩二歩

行く手にはいつものおでん屋台もなし

女学生ページをめくる毛手袋

きのうきょう間に生まる雪だるま

豆腐汁腹におさまる温かさ

(海150121)

雪だるま

坂から雪玉を転がすと、加速してどんどん雪がついて直径が大きくなります。まさに、「借金」などに用いられる「雪だるま式に増える」です。 

仁王門(5句)

冬ざれや白身の深さ茹で卵

ほどほどの歯応よろし雑煮餅

風花や筋隆隆と仁王門

何気無き言葉に出会ふ懐手

下ろし立て軍手で雪を掻き始む

(り150216)


仁王門

「仁王門」は、寺院を守る金剛力士(仁王)を安置した門。門の左右にヤクシャ (夜叉) を配すること仏教文典に記され、奈良時代から日本でも盛んに行われました。

風呂吹(5句)

原稿の文字敷き詰めし霜夜かな

風呂吹や妻に告げたき事あれど

大寒や悪夢の朝の目玉焼

テオルボの通奏低音牡丹雪

生垣の此方と其方寒椿

(り)

Furofukidaikon001

大根をゆでてユズみそなどをかけて食べる「風呂吹」。むかし浴客の垢をこすって落とす人を風呂吹といい、その様子が熱い大根をふうふう吹いて食べる姿に似ていたためこう呼ばれるようになったとの説もあるそうです。

案山子(5句)

刈り跡は案山子ひとりの暮らしぶり

路に紋沁みる頭頂初時雨

流れあり団地の谷に冬の風

毛糸玉閉じた時間を解し居り

滑落の時一瞬に固まれり

(海141230)

かかし

「案山子(かかし)」は、悪臭を発して鳥獣を追う「嗅(か)がし」、あるいは「鹿驚(かがせ)」が語源とされていて、「ソメ」「シメ」と呼ぶ地方もあります。

枯尾花(5句)

行きずりに触れば震ふ冬紅葉

風立ちて信濃追分枯尾花

木枯や村に分け入る宣教師

白鳥や仮の棲みかの主となり

輪を離れひとりの在処炉のありか

(り141214)

枯尾花

「枯尾花」は、枯れたすすきの穂、枯れすすき。「狐火の燃えつくばかり枯尾花」(蕪村)。『枯尾花』は、1694(元禄7)に刊行された其角編の芭蕉追善俳諧集のタイトルにもなっています。

干大根(5句)

心境のさかいを跨ぐそぞろ寒

輪を離れ一人で在りぬ炉の灯り

ばあちやんも母もむすめも息白し

意のままにならず巨大なくさめせり

干大根つるし終へたり鬼瓦

(り151127)

干し大根

大根を日干し、漬けて水分を減らすことで、本来の味が濃縮され、米糠の中の麹がデンプンを分解して生ずる糖分により甘味が増していきます。

春一番(5句)

春一番回送列車と通り過ぐ

春一番ダンス習いにでもゆこか

卒業式幾年前か指を折り

ブランコで香りを掬う沈丁花

肩ひとつ布団ぬけ出す夜半の春

(海150128)

春の嵐

気象庁の定義では「立春から春分までの間で、日本海で低気圧が発達し、初めて南寄りの強風(秒速8m以上)が吹き、気温が上昇する現象」を「春一番」といいます。春の強風には「春疾風(はるはやて)」「春荒(しゆんこう・はるあれ)」「春嵐(はるあらし)」〉などの呼び名もあります。

雛流し(5句)

遅き日やはさみを入れるもの数多

生きざまに言葉は要らず猫柳

雛流す平安京の夜深し

仏和辞書めくりめくれて桜餅

風光る屋根裏部屋の声高し

(り160313)

流し雛
*wiki

『源氏物語』の須磨の巻には、光源氏がお祓いをした人形(形代)を船に乗せて須磨の海に流したことが記されています。

団子坂(5句)

遙かなるものと流氷来たりけり

グレゴリオ聖歌広ごる大枯野

夕暮や街透き徹る雪祭

冬温し猿は諸手で毛繕ひ

外套の坊ちやんぶらり団子坂

(り150306)

坂下

「団子坂」は、東京都文京区の東京地下鉄千代田線千駄木駅から西へ上る坂。地名の由来は,昔団子を売る店があったとか、団子のような石の多い坂だったなど諸説あります。

木綿豆腐(5句)

過ぎゆくは一番電車春疾風

水ぬるむ木綿豆腐にけづり節

童顔で逝きたる友や春の夢

麗らかやバケツに絵筆渦の色

花吹雪蹴散らしボール遊びの子

(り改170414)

木綿豆腐

豆乳の温度が約70℃に下がったところで凝固剤を加えてかきまぜ、綿布を敷き穴をたくさん開けた型箱に移して凝固させ、重石をかけて水分を切ると「木綿豆腐」ができます。絹ごしは濃いめの豆乳を穴のない型箱に入れてそのまま凝固させ、重石を用いないので表面が滑らかになるそうです。

若布(4句)

春めきて四方見渡して歩道橋

はるあさし思川には泪橋

潮寄せて桶にあふるる刈若布

強東風や寝顔のまんま乳母車

(岳150307)

ワカメ

古事記や万葉集にもみられる「若布(ワカメ)」は、若いほど味がよく早春が旬。若さに通じるとして「若布」という漢字があてられているとか。

弥勒仏(5句)

屈伸の体操始む恋の猫

春寒や裸に近き弥勒仏

春めくや千手菩薩の手も動く

夜桜や癌病棟の窓明り

無念だと外科医は逝きぬ花灯

(古150321)

弥勒仏

「弥勒仏」は、遠い未来、慈しみにより生あるものすべてをすくう菩薩。釈迦入滅後56億7000万年ののち、兜率天(とそつてん)から地上にくだり釈迦にかわって衆生を救済する、とされます。

蘇軾(5句)

柔らかき万年筆や風光る

津波来し一万キロや春の雷

ご破算で願ひましては木の芽時

引き際を思案中かな山笑ふ

柳絮舞ふ蘇軾左遷の旅にあり

(り)

蘇軾

蘇軾(1036-1101)は、中国・北宋の文学者、書家、政治家。政争の渦に巻込まれ、さらに直言をはばからぬ性格もあって、しばしば左遷され、生涯の多くを地方長官で過したことで知られています。

信楽の狸

夜桜のトンネル抜けて闇新た

信楽の狸お目覚め春山路

香も色も一重の衣桜餅

鎌倉の大仏纏ふ春時雨

春真昼チキンライスの蕃茄味

(り)

狸

信楽焼の狸は明治時代に陶芸家の藤原銕造が作ったのが最初と言われています。1951年、昭和天皇が信楽町行幸の際、狸たちが延々と続く情景に感興を覚えて歌を詠んだとされ、有名になったそうです。

かたつむり(5句)

米蔵に罅ざつくりと雪解川

雪のひま兜被る鬼瓦

林檎咲く大峰山にプチ天守

嫁御さも里人となり田植笠

槍構へ石垣攀ぢるかたつむり

(り160526)

カタツムリ

「かたつむり」には右巻きと左巻きがありますが、日本のものでは、ヒダリマキマイマイなど少数を除いて大多数の種は右巻きだそうです。

蟻地獄(5句)

早乙女や安達太良山に雲は無し

明急ぐ光と影の山路踏む

沢蟹はあぶくぽこぽこ隠れ居り

新参の人類来たり蟻地獄

常念も槍も穂高も山開く

(り170613)

アリ地獄

「蟻地獄」は、ウスバカゲロウの幼虫で、乾いた土や砂にすり鉢状の穴を掘り、その底に隠れてアリなどを捕食する。その殺虫活性はフグ毒のテトロドトキシンの130倍、1ヶ月以上飲まず食わずでも生存しているそうです。

蕗の薹(5句)

蒲公英やがたりがたりと水車小屋

表札は亡父のままや落椿

惚けし母からりと揚げり蕗の薹

泣虫も餓鬼大将も端午かな

下町に一陣の風祭笛

(り170512)

ふきのとう

フキノトウはキク科フキ属の多年草で、日本原産の山菜。「蕗の薹」は、そのつぼみの部分にあたり、花が咲いた後、地下茎から伸びる葉(ふき)が出てきます。

戸隠(5句)

藍薄き戸隠山や夏暖簾

紫陽花や天水ころと転がれり

緑陰に白球一つ動かざり

朝刊の見出し驚し明け早し

汗拭ふ列の尻尾で電車待つ

(り160613)

戸隠

「戸隠山」は、長野市戸隠にある、海抜1904メートルの山。全山が凝灰岩質集塊岩からなり、鋸のこぎり状の崖が連なります。古来、山伏の修験道場で、戸隠そばでも知られます。

麦茶(5句)

遊説の声高らかに海開き

王将の逃げ道さぐる夕立雲

婆ちやんの卓袱台色の麦茶かな

川下り竿の先入る夏の霧

風鈴の声や夫婦は無口にて

(り160712)

麦茶

「麦茶」は、江戸時代には屋台の「麦湯売り」として流行しました。「夏の夕方より、町ごとに麦湯という行灯を出だし、往来へ腰懸の涼み台をならべ、茶店を出すあり」(『寛天見聞記』)というように、専門の麦湯店も出現しました。

鯉のぼり(5句)

深井戸の水汲み上げて五月来る

姨捨にだんだん畑雲の峰

塗り替へし漆喰の蔵鯉のぼり

励まして励まされては柏餅

艶のある信州訛り柿若葉

(り160512)

こいのぼり

「鯉のぼり」は、江戸時代、武士が尚武の日として旗指物などの武家飾りを門口に立てたのに対抗して、町人が滝をも登る出世魚のコイを幟として立てたのに始まるそうです。

初夏(5句)

遠き日の遠足の日のゆで卵

粛粛と遠足の列古戦場

初夏や金平糖のいぼ幾つ

金太郎飴の顔して初夏に入る

ほどほどの雲がお似合ひ鯉幟

初夏

旧暦の4月を「初夏」(新暦の5月初旬から6月初旬) 、旧暦5月を「仲夏」(6月初旬から7月初旬)、旧暦6月を「晩夏」(7月初旬から8月初旬)と呼んでいます。 

鶴翼(5句)

首塚の山に竹の子顔出せり

草笛や家名手柄はあらざりき

陣触れはお国訛りや雁の列

色鳥も四方ちりぢりに陣太鼓

国造る神鶴翼に天の川

(り160528)

kakuyoku

「鶴翼」とは、鶴が翼を張ったように、中央から左右にゆるやかなV字形に陣翼を延ばして敵兵を包囲しようとする陣形をいいます。

沢蟹(5句)

藍染めの戸隠山や夏暖簾

写生にてうつし取らるる谷若葉

沢蟹の動くを待ちて水澄みぬ

紫陽花と群れて眺めし屋形船

香水や一期一会のすれ違ひ

(り150628)

サワガニ

「沢蟹」(サワガニ)=写真、wiki=は、2センチ程度の大きさで、日本唯一の純淡水産のカニ。渓流や水のきれいな小川などにすみ、はさみは多くはの場合右が大きい。卵の中で幼生期を過ごし、孵化しても雌の腹部に抱かれています。

黄砂(7句)

小刀で削ぐ鉛筆や春日影

鋸屑の山なだらかに春日影

ずんぐりと体育館や春燈

大陸に万巻の書や黄砂降る

林檎咲く川中島に風もなし

折畳傘畳みをる薄暑かな

かつきりと割箸割れて豆ごはん

(岳150524)

黄砂

「黄砂」は、ゴビ、タクラマカン砂漠、黄土高原などから強風により大気中に舞い上がった黄砂粒子が浮遊しつつ降下する現象。上空 10 m の平均風速が 5 m/s を超えると地面から砂塵が舞い上がり始めるそうです。

一茶(6句)

囀や四十九日の父の庭

仏壇に餡パン供ふ明易し

鋤簾持つ砂の女に青嵐

新緑や川中島に人馬なし

子雀や一茶頬杖つきて居り

夫送り母は実梅を漬け始む

(岳150523)

一茶

小林一茶(1763-1827)は、1812年、故郷の信濃・柏原へ戻り、52歳で妻帯、子をもうけたが妻子ともに死去。後妻を迎えたが離別するなどしたうえ、類焼の厄にあって土蔵に起臥するうち中風を患って亡くなりました。

金太郎飴(5句)

蛇穴を出づ今日もまた職探し

遠きあの遠足の日やゆで卵

金太郎飴の顔して夏来る

ほどほどの雲がお似合ひ鯉幟

合掌の僧しなやかや朝涼し

(り8月)

金太郎飴

「金太郎飴」のような飴細工の起源は、江戸の元禄期にまで遡るようです。大阪では「おかめ」や「福助」の絵柄なのを修行に行って知った職人が、関東らしく足柄山にあやかって名付けられたとか。

六条大麦(5句)

惑星の瘤の上にて御来光

夢少女六条大麦麦茶干す

酔ひ染まり俯く顔のサングラス

バス停に朝顔市のハートの葉

風鈴や顔もおぼろな隣びと

(り150714)

六条麦茶

麦茶の原料はふつう「六条大麦」が使われます。穂を上から見ると穂の実が6列についています。六条大麦は寒さに強く、古来、日本で栽培されてきた品種。古くは炒って粉にし「麦こがし」や「はったいこ」として食べていました。

たんぽぽ(5句)

春疾風母は頭のリハビリ中

徘徊か散歩途上か猫さかる

迷ひ入るたんぽぽ畑夢うつつ

手のひらの蛙と語る老母かな

序破急のこころ跳ね散る庭花火

(りP㊤)

たんぽぽ

「たんぽぽ」の花茎を短く切って両端を裂き、水に浸けると、放射状に両端が反り返って鼓の形に似ています。柳田国男らは、そのツヅミグサから鼓を打つ音(タンポンポン)と結び付いて、たんぽぽの名が成立したと説いています。