Palabra

日々「言葉」をひろっています

俳句

あぶくぽこぽこ(12句)

雛流す平安京の夜深し

仏和辞書めくりにめくれ桜餅

小諸なる古城ざざめく花盛り

屋上のクレーンくの字春の雲

猩猩緋色のくちびる瓜をはむ

生きものに雌と雄あり汗香る

サイホンにあぶくぽこぽこ涼新た

蟋蟀や蒸気機関車脚いくつ

爆弾の澄まし顔して檸檬かな

迷ひ入る糺ノ森や照紅葉

卓袱台に蜜柑の山の生まれたり

生国の貌で水鳥戯るる

(り100号記念170813)

あぶく

ゲリラ豪雨(5句)

遠雷や畦道戻るランドセル

病葉に鞭打つゲリラ豪雨かな

地団駄を踏めど動かず蝸牛

老耄の母の手に座す雨蛙

呼吸器の繋ぐいのちや大西日

(り170714)

ゲリラ

青田(5句)

安曇野や寄せては返す青田波

序破急を競ふ線香花火かな

風の香や記憶は寄せてまた消ゆる

水を打つ母は後家御のまま五年

認知症深まる母や門火燃ゆ

(り170814)

青田

沢蟹(5句)

友逝くやらせん階段蝉時雨

御巣鷹に沈思黙考沢の蟹

ためらひを楽しみながら踊の輪

蔓さぐり笑ふ西瓜を刈入れり

送り火の一期一会に送られて

(り160813)

沢蟹

眼(5句)

水打ちてほどなく四十九日かな

単眼をはきと颱風迷走す

秋うらら二十歳の頃のきみの肌

ひろごれる雲の船団遠案山子

真田藩十万石や稲すずめ

(り160913)

眼

ばった(3句)

ほうけ立つ裸体の老母洗ひ髪

ばつたにもきつたはつたのありしかな

生きかたは百万通り雁渡る

(り全)

ばった

ホメロス(5句)

古本の愛しきにほひ秋蚊鳴く

爽涼やホメロス叙事詩読了す

まだ片目だけの達磨や秋気満つ

軍馬なき川中島や稲架襖

ぶら下げてコンビニ袋秋旱

(り12)

ホメロス

コスモス(5句)

秋桜や風の濁りも気にとめず

懐の寂しさつげるちちろ虫

しぶ柿やいがぐり頭にきび面

案山子にもボロ着ふだん着一張羅

迷ひ入る糺ノ森や照紅葉

(り161013)

コスモス

釣瓶落し(5句)

魚屋も八百屋も釣瓶落しかな

柿吊す茅葺屋根や雨宿り

秋深む字引に言葉拾ひをり

犀川に一番星や芒散る

影深く降ろし息つく刈田道

(り161114)
釣瓶落とし

長き夜(5句)

鰯雲弾きて飛ばす高笑ひ

黄金の里に新参稲雀

新蕎麦や笊にはじける柳腰

左遷さる杜甫の長き詩長き夜

水澄みて見えざるものを眺めをり

(り151012)

長き夜
*杜甫

クラーク(15句)

うめきうめきいま流氷は接岸す

友逝くや根釧原野揚雲雀

蒲公英や屯田兵の村に入る

クラークの指さす彼方柳絮舞ふ

しんしんとしんしんと沁む新樹光

軽鴨はでんぐりがへし蓮開く

秋麗ポプラ並木の影太し

けちけちとせずに積りぬ黄落期

さくさくとときは刻めり枯葉道

ほつとけや散乱反射風花す

ひとしづく雨ひとひらの雪と化す

鐘響く雪に音なし時計台

窓をぶつちんちん電車玉霰

原色の屋根に波なす氷柱かな

暮れ初むる街透き徹り雪まつり

(り170528)

クラーク

橅占地(5句)

曼殊沙華老母虚ろな眼の在りか

長き夜やゴッホ自画像描き居り

修験者の山のふところ蕎麦の花

したたかに生きる強さや橅占地

稲すずめ散らし手を振る街宣車

(り)

ブナシメジ

刈田道(5句)

魚屋も八百屋も釣瓶落しかな

柿吊す茅葺屋根や雨宿り

秋深む字引に言葉拾ひをり

犀川に一番星や芒散る

影深く降ろし息つく刈田道

(じ161114)

刈田

石ぼとけ(5句)

生国の貌で水鳥戯れり

一陣の風追ふ鷹や古戦場

から風や耳半分の石ぼとけ

新聞の見出したてよこ置炬燵

とろとろと冬至南瓜はまろまりぬ

(り161222)

石ぼとけ

落花生(5句)

こだはりのうどん打ちあげ秋気満つ

落花生剥くが仕事や母惚く

稲雀理屈ありげに集まれり

一夜にて夜店陣取る酉の市

埋火や太郎次郎は要介護

(り)

落花生

寒卵(7句)

爆弾の顔して澄ます檸檬かな

土踏まず踏んづけ歩く刈田原

躓きつつつつと歩む寒すずめ

板チョコの割れる音して冬来る

鷹匠の髭はさほどに濃くあらず

洗濯の硬き湿りや冬ざるる

骨の無き輩でありぬ寒卵

(り151112)

寒卵

「白首」(10句)

蹴上げれば枯葉天狗の如き舞

生きづらき巷に盛らる落葉搔

吊橋に吊られしままに山眠る

彼の国の顔で水鳥戯れり

衛星は軌道離れる月冴ゆる

白首の練馬大根引き抜けり

狩人は戻り飯場の主となり

大根を角材として食とせり

凍鶴やいのち一つの点となる

鍋焼や天に一筋息を吹き

(り151213)

白

師走空(5句)

天井は雲の底なり枯野原

爽快な孤独は愉し冬星座

万国旗そ知らぬ顔や師走空

向き合ひてほうけし妻夫咳こぼす

年暮るる老母入れ歯を探しをり

(り1803)

師走

新春(5句)

犀川も戸隠山も寒靄

除夜の坂呆けし母と長命寺

禿頭に香煙浴びて初詣

去年今年つり橋ゆられゆらしつつ

手すき紙の背筋すっきり筆はじめ

(り170113改)

新春
*戸隠山

カント(5句)

大北風尻で蹴散らす道祖神

繭玉や餓鬼大将も知りし恋

外套のカント時計を気に掛けり

我が事の如く語らふ藁仕事

大寒の奏づる音に耳寄せり

(り160112)

カント

半寿(5句)

本年もまずは左手初手水

母半寿霰撥ね除け徘徊す

悴む手成らぬ想ひにしがみつき

松下しごみの曜日のごみの山

壁土の零れる蔵や雪起し

(り)

碁盤

日脚(5句)

灯台やいま流氷は接岸す

雪を踏む音や交番赤洋灯

冬ざれや白身の厚き茹で玉子

声寄せて伸びる日脚や通学路

春雨や魔女の一撃妻眠る

(り170213)

日脚

雪だるま(5句)

息の白確かめながら一歩二歩

行く手にはいつものおでん屋台もなし

女学生ページをめくる毛手袋

きのうきょう間に生まる雪だるま

豆腐汁腹におさまる温かさ

(海150121)

雪だるま

仁王門(5句)

冬ざれや白身の深さ茹で卵

ほどほどの歯応よろし雑煮餅

風花や筋隆隆と仁王門

何気無き言葉に出会ふ懐手

下ろし立て軍手で雪を掻き始む

(り150216)


仁王門

風呂吹(5句)

原稿の文字敷き詰めし霜夜かな

風呂吹や妻に告げたき事あれど

大寒や悪夢の朝の目玉焼

テオルボの通奏低音牡丹雪

生垣の此方と其方寒椿

(り)

Furofukidaikon001

案山子(5句)

刈り跡は案山子ひとりの暮らしぶり

路に紋沁みる頭頂初時雨

流れあり団地の谷に冬の風

毛糸玉閉じた時間を解し居り

滑落の時一瞬に固まれり

(海141230)

かかし

枯尾花(5句)

行きずりに触れば震ふ冬紅葉

風立ちて信濃追分枯尾花

木枯や村に分け入る宣教師

白鳥や仮の棲みかの主となり

輪を離れひとりの在処炉のありか

(り141214)

枯尾花

干大根(5句)

心境のさかいを跨ぐそぞろ寒

輪を離れ一人で在りぬ炉の灯り

ばあちやんも母もむすめも息白し

意のままにならず巨大なくさめせり

干大根つるし終へたり鬼瓦

(り151127)

干し大根

春一番(5句)

春一番回送列車と通り過ぐ

春一番ダンス習いにでもゆこか

卒業式幾年前か指を折り

ブランコで香りを掬う沈丁花

肩ひとつ布団ぬけ出す夜半の春

(海150128)

春の嵐

雛流し(5句)

遅き日やはさみを入れるもの数多

生きざまに言葉は要らず猫柳

雛流す平安京の夜深し

仏和辞書めくりめくれて桜餅

風光る屋根裏部屋の声高し

(り160313)

流し雛

団子坂(5句)

遙かなるものと流氷来たりけり

グレゴリオ聖歌広ごる大枯野

夕暮や街透き徹る雪祭

冬温し猿は諸手で毛繕ひ

外套の坊ちやんぶらり団子坂

(り150306)

坂下

木綿豆腐(5句)

過ぎゆくは一番電車春疾風

水ぬるむ木綿豆腐にけづり節

童顔で逝きたる友や春の夢

麗らかやバケツに絵筆渦の色

花吹雪蹴散らしボール遊びの子

(り改170414)

木綿豆腐

若布(4句)

春めきて四方見渡して歩道橋

はるあさし思川には泪橋

潮寄せて桶にあふるる刈若布

強東風や寝顔のまんま乳母車

(岳150307)

ワカメ

弥勒仏(5句)

屈伸の体操始む恋の猫

春寒や裸に近き弥勒仏

春めくや千手菩薩の手も動く

夜桜や癌病棟の窓明り

無念だと外科医は逝きぬ花灯

(古150321)

弥勒仏

蘇軾(5句)

柔らかき万年筆や風光る

津波来し一万キロや春の雷

ご破算で願ひましては木の芽時

引き際を思案中かな山笑ふ

柳絮舞ふ蘇軾左遷の旅にあり

(り)

蘇軾

信楽の狸

夜桜のトンネル抜けて闇新た

信楽の狸お目覚め春山路

香も色も一重の衣桜餅

鎌倉の大仏纏ふ春時雨

春真昼チキンライスの蕃茄味

(り)

狸

かたつむり(5句)

米蔵に罅ざつくりと雪解川

雪のひま兜被る鬼瓦

林檎咲く大峰山にプチ天守

嫁御さも里人となり田植笠

槍構へ石垣攀ぢるかたつむり

(り160526)

カタツムリ

蟻地獄(5句)

早乙女や安達太良山に雲は無し

明急ぐ光と影の山路踏む

沢蟹はあぶくぽこぽこ隠れ居り

新参の人類来たり蟻地獄

常念も槍も穂高も山開く

(り170613)

アリ地獄

蕗の薹(5句)

蒲公英やがたりがたりと水車小屋

表札は亡父のままや落椿

惚けし母からりと揚げり蕗の薹

泣虫も餓鬼大将も端午かな

下町に一陣の風祭笛

(り170512)

ふきのとう
*フキノトウ

戸隠(5句)

藍薄き戸隠山や夏暖簾

紫陽花や天水ころと転がれり

緑陰に白球一つ動かざり

朝刊の見出し驚し明け早し

汗拭ふ列の尻尾で電車待つ

(り160613)

戸隠
*戸隠山

麦茶(5句)

遊説の声高らかに海開き

王将の逃げ道さぐる夕立雲

婆ちやんの卓袱台色の麦茶かな

川下り竿の先入る夏の霧

風鈴の声や夫婦は無口にて

(り160712)

麦茶

鯉のぼり(5句)

深井戸の水汲み上げて五月来る

姨捨にだんだん畑雲の峰

塗り替へし漆喰の蔵鯉のぼり

励まして励まされては柏餅

艶のある信州訛り柿若葉

(り160512)

こいのぼり

初夏(5句)

遠き日の遠足の日のゆで卵

粛粛と遠足の列古戦場

初夏や金平糖のいぼ幾つ

金太郎飴の顔して初夏に入る

ほどほどの雲がお似合ひ鯉幟

初夏

鶴翼(5句)

首塚の山に竹の子顔出せり

草笛や家名手柄はあらざりき

陣触れはお国訛りや雁の列

色鳥も四方ちりぢりに陣太鼓

国造る神鶴翼に天の川

(り160528)

kakuyoku

沢蟹(5句)

藍染めの戸隠山や夏暖簾

写生にてうつし取らるる谷若葉

沢蟹の動くを待ちて水澄みぬ

紫陽花と群れて眺めし屋形船

香水や一期一会のすれ違ひ

(り150628)

サワガニ

黄砂(7句)

小刀で削ぐ鉛筆や春日影

鋸屑の山なだらかに春日影

ずんぐりと体育館や春燈

大陸に万巻の書や黄砂降る

林檎咲く川中島に風もなし

折畳傘畳みをる薄暑かな

かつきりと割箸割れて豆ごはん

(岳150524)

黄砂

一茶(6句)

囀や四十九日の父の庭

仏壇に餡パン供ふ明易し

鋤簾持つ砂の女に青嵐

新緑や川中島に人馬なし

子雀や一茶頬杖つきて居り

夫送り母は実梅を漬け始む

(岳150523)

一茶

金太郎飴(5句)

蛇穴を出づ今日もまた職探し

遠きあの遠足の日やゆで卵

金太郎飴の顔して夏来る

ほどほどの雲がお似合ひ鯉幟

合掌の僧しなやかや朝涼し

(り8月)

金太郎飴

六条大麦(5句)

惑星の瘤の上にて御来光

夢少女六条大麦麦茶干す

酔ひ染まり俯く顔のサングラス

バス停に朝顔市のハートの葉

風鈴や顔もおぼろな隣びと

(り150714)

六条麦茶

たんぽぽ(5句)

春疾風母は頭のリハビリ中

徘徊か散歩途上か猫さかる

迷ひ入るたんぽぽ畑夢うつつ

手のひらの蛙と語る老母かな

序破急のこころ跳ね散る庭花火

(りP㊤)

たんぽぽ